誰もが不満を示さなかったリバプールの「采配ミス」

最後のダービー戦を迎えたジェラード

 7日に迎えたプレミアリーグ第24節「マージーサイド・ダービー」。リバプールとエバートンによるこの一戦は、両サポーターが隔離されない数少ないダービーのひとつであり、家族間や友人間で応援するクラブが異なることも多く、両サポーターが隣同士に座って観戦することも珍しくない。

 とはいえ、この港町の住人は、情熱と気性の荒さで知られていることもあり、ピッチ上でレッドカードが飛び交うことも多く、席の近さ故にサポーター同士の乱闘が起きる事例もある。それほど危険でスリリングなダービーとしても有名だ。

 ところが、この日はどこか物静かで独特な雰囲気がエバートンのホームスタジアムであるグディソン・パークを包んでいた。その背景には、赤き背番号「8」のユニフォームを身につけ、腕にキャプテンマークを巻く男の存在があった。

 スティーブン・ジェラード。17歳にリバプールでプロデビューを果たし、22歳でキャプテンに任命され、24歳にはクラブを欧州王者に導いた。リバプールサポーターでもあった少年は、月日を経て、リバプールの伝説的な存在になっていた。

 だが、今年1月、サッカー人生を一途に捧げてきたリバプールからの退団を表明。世界にも激震が走り、サポーターは突然起きた悲劇に呆然とする他なかった。

 そして、その状況の中で迎えたジェラードにとって最後のダービー戦。それは常に宿敵の立場にあったエバートンサポーターにも少なからず影響をもたらしていた。ピッチに現れたリバプールのキャプテンを煽る者が一切いなかったのだ。

「これまでのダービーと同じようにプレーするよ」。試合前のインタビューでジェラードが口にしたように、試合は立ち上がりから激しく拮抗した展開となった。互いに決定機を演出するも、得点には至らず、試合は後半を迎えていた。

 

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