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FC東京の不動のサイドバックに起こった9年目の“初体験” 世界にも羽ばたけたはずの男は今、何を思うのか
男に悲壮感はない
「いずれはポジションを取られるときはくる。たまたまずっと同じポジションで長く出場できているけど、競争はどのクラブ、どの世界にもある。他のポジションでは毎年、選手が入れ替わり、立ち替わり入ってきている。それがプロの世界だから。もちろん負けたくないし、一時的に失ったとしても取り戻そうとする気持ちもある。だけど、どんなときも淡々とやるんじゃないですか。それで気持ちが切れることはない。しっかりと現実を受け入れて取り組むだけだと思う」
ただし、徳永には悲壮感はなく、どこかうれしそうにそう語った。まるでライバルの出現を喜んでいるようにさえ映った。
「確かに、長くポジションを守ることは大変。毎年すごい選手が入ってくるし、どんどん下からも突き上げがある。居座り続けることは難しく、追い出されることだってある。でも、それが当たり前。そういう中で自分は怪我せずプレーし続けたことは誇りでもある」
そう言うと、笑いながら「我ながら、そう思いますけどね」と付け加えた。目の前にはとびきりの刺激がある。何かが変わるかは分からない。だけど、シンプルで簡潔な事実がひとつある。徳永悠平はいまちょっと楽しそうだ。
【了】
馬場康平●文 text by Kohei Baba