吉田麻也の現在地 プレミア最少失点クラブでポジションを争う日本人CB
3年契約を勝ち取った吉田、クーマン監督も期待を寄せる存在に
やはり英国と日本の距離は大きい。しかも、今回のアジア杯の舞台になったオーストラリアは英国から最も飛行時間が長い国のひとつ。20時間以上のフライトをこなし、冬には9時間に広がる時差に耐えなくてはならない。
ところが麻也は初戦で見事に復帰した。無論アルデルバイレルトが怪我をしていたことも大きい。日本代表DFの留守中はルーマニア人DFガルドスが3試合連続でベルギー代表DFの代役を務めた。
ガルドスを擁したサウサンプトンは、前節のFA杯4回戦こそアウェイのクリスタルパレス戦で2-3負けを喫したが、FA杯3回戦再戦となったイプスウィッチとのアウェイ戦は1-0、そしてニューカッスルのアウェイ・リーグ戦も2-1でもぎ取り、ともに堅守が光る1点差勝利を飾った。この結果なら、日本の敗退から8日間空いてはいたとはいえ、遠い真夏のオーストラリアから帰ってきたばかりの麻也を即先発させる必要はないだろう。
しかしすぱっとガルドスを見切って麻也を敢然と起用したところを見ると、クーマン監督が日本代表DFをルーマニア人DFより上に見ていることは明らかだ。
それに、アジア杯に旅立つ直前、今季一杯までの契約となっていた麻也に3年の新契約を提示していた。
しかしそうした状況――3年契約をもらい、躍進するサウサンプトンで僅差の準レギュラーとなっても、麻也はこう話して気を引き締めた。
「契約は更新したけど、まだ何も勝ち取ってはいない。ここで何も成し遂げていないんで。引き続き、レギュラー争いは続くし、別に3年契約したからといって、自分が使えなかったら新しい選手をどんどん穫ってくる予算は(サウサンプトンには)ある。常に(移籍解禁期間を挟んで)半年、半年が戦いだと思っている。だからやることは変わらない」
確かにこれまで、サウサンプトンに移籍して来てからの麻也の置かれた状況を見ると、そう考えるのも無理はない。
1年目。プレミア昇格したばかりのサウサンプトンで、麻也はレギュラーの座をがっちりと固めた。ところがシーズンの真っただ中だった2013年1月18日、どこかお人好しだったイングランド人の熱血監督アドキンスが解任されると、強い野心を抱いた元アルゼンチン代表DFのポチェティーノが監督となって、サウサンプトンは翌シーズン開幕前にクロアチア代表DFロブレンを獲得した。その結果、麻也は控えに甘んじることになり、プレミア2年目はいばらの道に変わった。
麻也にはきつい補強だったが、サウサンプトンにとって、ロブレンの獲得はヒットだった。昨季の前半、モウリーニョ監督は「私としては(マンU、マンC等の)ライバルチームとの対戦で、サウサンプトンにはフォンテとロブレンのセンターバック・コンビを必ず使って欲しいが、それは無理な注文だ」と発言。一昨年秋のサウサンプトンのセンターバック2枚を彼らしい言い回しで絶賛していた。