本田が肌で感じたイタリアの現実 伝統のカルチョは変わるべきなのか?

遠い距離感とイタリアの文化

 ACミランの日本代表FW本田圭佑は1日、3-1で勝利したパルマ戦の試合後、堅守速攻というミランとイタリアサッカーの伝統から脱却する必要性を訴えた。

 本田は、準々決勝UAE戦でPK戦の末に敗退したアジアカップオーストラリア大会に出場していたため、約1カ月間チームから離脱していた。昨年12月20日のローマ戦以来となる久々の先発出場を果たした

 フィリッポ・インザーギ監督は、この試合で変則4トップシステムの4-2-4という新機軸を打ち出した。そして、本田は前半途中に右のアタッカーから不慣れな左サイドへとコンバートされた。

 見慣れない 景色、そして、同僚とのぎこちない連係。左サイドで気づいたことは、選手との距離感だったという。

「もともとミランは遠いですよね。だから新しいミランをつくっていかなきゃならないと思うんですよね。全盛期のミランも(選手の距離が)遠かった印象です。でも、それをカカとかシェフチェンコが、ピルロからパス一本で、そのまま点をとってしまう。それはイタリアサッカーの文化でもあると思う。代表チームも(選手の距離が)遠いし、イタリアサッカーの文化も遠い。あまりパスサッカーは好まないでしょう。だから(パス回しが)詰まったら、前へ(ロングボールを)蹴る。リスクを負って、ボランチになんてボールをあてる必要ない」

 勝利至上主義のイタリアにおいては、失点のリス クを最小限に減らす傾向が強い。中盤での細かいパスを回し切れずにカウンターをくらうぐらいなら、前線めがけてロングボールを蹴るというシンプルさがある。

 全盛期のミランもアンカーのMFアンドレア・ピルロのロングパス一本で、MFカカと、FWアンドリー・シェフチェンコの高速カウンターから敵陣を急襲してきた。そして、スーペル・ピッポが仕留めるという黄金パターンを確立し、多くのタイトルを獲得した。当時のミランを率いた名将、カルロ・アンチェロッティ氏は、現在レアル・マドリードでも強烈なカウンターを武器に勝利を積み重ねている。圧倒的な個人能力の集積だったかつてのミランに、攻撃時の選手の距離感はさほど重要なテーマではなかったのかもしれない。

 しかし、本田 はカウンターへの依存度の高いカルチョの世界にも、そしてミランにも変化が必要だと考えているようだ。本田は言う。

「でも、将来のビジョンを描くなら、イタリアは周りのサッカーをもっと勉強して、受け入れて行かないと、取り残される可能性はあると思うんですよ」

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