Jリーグを舞台に幕を開けたある双子の物語 うり二つの兄弟がともに誓う約束とは
果たすことができた一つ目の約束と、その先に思い描くもう一つの約束
開幕前、双子は言った。力が「ずっと一緒だったから陸がいないのは変な感じ」と話せば、陸も「対戦は楽しみ。ずっと一緒だったから」とピッチの上での再会を心待ちにしてきた。
そして、2人は、4月29日のJ1リーグ第10節FC東京-名古屋戦で、生まれて初めて異なるユニフォームを着て対峙した。陸が後半10分、徳永に代わってピッチに送り出されると、力も遅れてアディショナルタイムに交代出場した。
力は「初めてなので気持ち悪かった。まるで紅白戦をしているみたいだった」と冗談交じりに語った。直接マッチアップしたのは数える程度だったが、プロの舞台で同じ顔の2人が必死になってボールを追いかけた。それは、幼いころから一番のライバルだった2人の原風景そのものだったのかもしれない。
試合終了の笛が鳴り、互いのユニフォームを脱いで手渡した。試合前から話していた「同時に出たらユニフォーム交換をしよう」という約束は果たされたのだ。ただし、彼らにはもう一つ、もっと大きな約束がある。
「また同じユニフォームを着てプレーしよう」
そのユニフォームの色はすでに決まっている。日の丸を背負い、2人にしか見えないまたあの景色をみるために、兄弟は、まだその道程を歩き始めたばかりだ。
【了】
馬場康平●文 text by Kohei Baba