これぞ新世代のサッカー選手! フットサルを学べば「ハイブリッド」な選手が生まれる?
フットサルをやると「視野が広がる」
フットサルのように狭いスペースでプレーする経験は必ずサッカーにも生きる。これはフットサル日本代表監督経験を持つミゲル氏もこれまでに何度も声を大にして伝えてきたことだ。“魔術師”の異名を持つスペイン人指揮官は、「フットサルで守備をやっている時、すごく大事なのは対戦相手の利き足がどちらなのかということ。ボールがどちら側にあるのかはとても重要なんです」と語る。これはフットサルは、サッカーに比べてより小さなコートで行われ、一瞬の隙がゴールに直結するからだ。「周りの選手がどこにいるのか、ゴールがどこにあるのかを把握することも重要。それ一つで自分の守備のポジションが変わるんです」と、サッカーに比べてより細かい部分の感覚が養われることをメリットに挙げた。
「サッカーのS級指導者ライセンスで話す機会があって、その時受講者に聞いたんです。ボールを持った相手がどの辺まで来たら危険だと思いますか? 彼らはおよそ2mで危険を感じるが、フットサル選手にとっては危険を感じずに、コーヒー飲みながらリラックスできる距離です。逆に言えば、フットサルでその距離を空けてしまったら間違いなく決定的なピンチを招きます。現代のスペースと時間を与えられないサッカーにおいてフットサルのこの感覚は非常に重要だと思います」
ミゲル氏の言葉を借りれば、フットサルを学んだ上でサッカーに取り組むことで、「ハイブリッドな選手」になるのだという。「サッカー選手がフットサルをやると視野が広がり、これまで見えなかった風景が急に見えるようになるんです」。このことは、2012年に45歳でフットサルW杯に出場した三浦知良(横浜FC)にも当てはまったという。
稲葉は高校時代まではサッカー、それからフットサルへ転身した。「高校の時にフットサルの感覚を持っていたら、もっと良かった」と話すように、“ハイブリッド型”の選手になる可能性を秘めた今の子どもたちに羨望の眼差しを向けた。
「子どもたちには『みんながフットサルをしっかり学んで、サッカーに生かせる第一世代になれる。みんながスタートだけど、絶対にプラスになる』と話してます。羨ましいとも思いますよ。スペインだと、それを何十年も前に始めているわけだですから」
日本では柏レイソルの大津祐樹や鹿島アントラーズの金崎夢生といった選手が、フットサルをプレーしていたことで知られているが、それもひとつの「特殊な例」としてしか捉えられていない。「フットサル→サッカー」。新しい架け橋が日本のサッカーを変えてくれる。そんな日が来るのが今から待ち遠しい。
(了)
<Profile>
稲葉洸太郎
1982年12月22日生まれ。フウガドールすみだ所属。2004年、史上最年少(21歳)でフットサル日本代表に選出。フットサルW杯には2012年、16年と2大会連続で出場、同大会における日本人最多得点記録を保持している。フットサルスクール「POTENCIA(ポテンシア)」のテクニカルディレクターを務めている。
ミゲル・ロドリゴ
1970年7月15日生まれ。フットサルタイ代表監督。2009年から16年まではフットサル日本代表を率い、2大会連続のW杯出場に導いた。12年大会では三浦知良(横浜FC)を招集して話題になった。フットサルスクール「POTENCIA(ポテンシア)」のメソッドプロデューサーを務めている。
POTENCIA(ポテンシア)
フットサルのスキルを現代サッカーに通用するスキルへと応用するためのメソッドを通して、指導を行うフットサルスクール。稲葉がテクニカルディレクター、ミゲル監督がメソッドプロデューサーを務める。出張レッスンを通じての指導も行っている。詳細は公式サイト(http://potencia.biz)へ。
【了】
石川 遼●文 text by Ryo Ishikawa
神山陽平●写真 photo by Yohei Kamiyama