遊びを通して強くなる? 元フットサル日本代表監督が教える「考えるサッカー」の学び方
実際の練習メニューは…
ミゲル氏は「考えてプレーする」という言葉を、何度も何度も繰り返す。子どもたちにはそうしてプレーの引き出しを増やしてほしいのだという。
「私はよくテクノロジーを例として挙げます。私たちはポテンシアの中で、それぞれのカテゴリーで何をやろうとしているのか。それは日本人の一番いい部分を残しながら、iCloudのようなバンクに様々なポテンシアメソッドを入れてあげたいんです。それぞれのレベルにそんなバンクを作ってあげたいんです。子どもたちがプレーする時にはそのバンクの中から、自分でどれを機能させるのか、どんなプレーをするのか、自分で選べるような選手に育てたいのです」
そのために、具体的にはどのような練習を行っているのだろうか。
子どもたちに足の裏を使ったドリブルを教えようとする。その時、ミゲル氏は同時に時計の読み方を教えられるようにした。例えば、子どもたちに時計の文字盤をイメージさせて、その中でドリブルしながらの鬼ごっこをさせる。
「さあ今は8時15分だ!」
すると子どもたちは頭を使い、ドリブルをしながら8時15分の針に向かってドリブルを行い、時計の読み方を覚えていく。鬼はボールを奪うために追いかけてくるため、子どもたちは体を使ってボールをキープする方法も同時に学んでいく。パスの練習では世界地図をイメージさせ、世界の国の場所や首都の名前を覚えられるような工夫が加えられる。こうした練習では、単に子どもたちへサッカーの知識や技術を植え付けるだけでなく、“遊び”ながらプレーすることを“学び”と結びつけて体に染み込ませている。
「私にとって彼らがどこの国の子どもであるのかは一切関係ありません。子どもは子どもだから。子どもの生まれながら持っているナチュラルさを大事にしたい。遊ぶことは彼らの仕事、生まれながら持っている嗅覚、感覚なんですよね。全ての感覚というのを遊びから学ぶ。
動物だって遊んでいるじゃないですか。狼の赤ちゃんは常に転がって、じゃれ合っていますよ。子どもだってそんなものです。だから彼らの自然を侵すことなく、自然に持っているものにボールで答えてあげましょうっていうのが私のやり方。我々が提案しているのは、遊びながらサッカーを勉強しようよ。遊びながら技術と戦術をやろうよということです」
(続く)
<Profile>
稲葉洸太郎
1982年12月22日生まれ。フウガドールすみだ所属。2004年、史上最年少(21歳)でフットサル日本代表に選出。フットサルW杯には2012年、16年と2大会連続で出場、同大会における日本人最多得点記録を保持している。フットサルスクール「POTENCIA(ポテンシア)」のテクニカルディレクターを務めている。
ミゲル・ロドリゴ
1970年7月15日生まれ。フットサルタイ代表監督。2009年から16年まではフットサル日本代表を率い、2大会連続のW杯出場に導いた。12年大会では三浦知良(横浜FC)を招集して話題になった。フットサルスクール「POTENCIA(ポテンシア)」のメソッドプロデューサーを務めている。
POTENCIA(ポテンシア)
フットサルのスキルを現代サッカーに通用するスキルへと応用するためのメソッドを通して、指導を行うフットサルスクール。稲葉がテクニカルディレクター、ミゲル監督がメソッドプロデューサーを務める。出張レッスンを通じての指導も行っている。詳細は公式サイト(http://potencia.biz)へ。
【了】
石川 遼●文 text by Ryo Ishikawa
神山陽平●写真 photo by Yohei Kamiyama