1分間のボールタッチ数は6倍! サッカー選手がフットサルをやるべき2つの理由
「間合いの感覚はすごく変わりました」
ボールにたくさん触れることで技術が身につく。狭いスペースの中でプレーすることで判断力が磨かれる。縦40メートル、幅20メートルというフットサルに対して、サッカーは縦105メートル、幅68メートルという大きさのピッチで行われる。しかし、実際にはサッカーにおいて、その広さを十分に使うことはほとんど無く、むしろ非常に限られたエリアの中でプレーされることがほとんどだ。
図1はあるサッカーの試合での一コマを示している。攻撃側の選手がアタッキングサードでボールを持ち、相手の守備を崩そうとしている局面で、黄色いラインで囲まれている部分は守備側の選手が収まっている範囲を示しているが、縦約37メートル、幅およそ23メートルとフットサルコートとほぼ同じ大きさであることが分かる。コートの大きさはサッカーがフットサルの約9倍であるにもかかわらず、だ。マイボール時はグラウンドを大きく、相手ボール時は出来る限りコンパクトに守るというサッカーの原理原則に従うと、このような陣形になることが示されている。
もちろん、サッカーではここから大きくサイドチェンジをすることも可能だが、それでもこの密集地帯を抜け出して展開することは簡単ではない。もちろんこの密集を突破していくことがゴールへの最短距離であることは間違いないが、難易度はかなり高い。そうした状況を打開するためにテクニックを駆使していくことは、まさにフットサルの真髄といえる。バルセロナの試合でネイマールやメッシが非常に狭いスペースでボールをキープし、相手との接近を恐れることなくドリブルやパス交換を行うシーンはよく目にする光景だろう。ミゲル氏は「サッカーではいろいろな場所でフットサルの試合が行われている」と表現している。
ミゲル氏が率いた日本代表で中心選手として活躍した稲葉は、高校までサッカーをプレーし、その後にフットサル選手へ転向した。だからこそ、感じるものも大きかった。
「フットサルを始めて間合いの感覚はすごく変わりました。高校時代にこの感覚を持っていたら、もっと良かったなと思います」
ボールを受ける前の予備動作によるフェイント、DFとDFの間に入り込むエントレリネアス(スペイン語で“ライン間”)など、スペースの少ないフットサルで当たり前に行われる技術が、サッカーに生かせると稲葉は実感していた。
(続く)
<Profile>
稲葉洸太郎
1982年12月22日生まれ。フウガドールすみだ所属。2004年、史上最年少(21歳)でフットサル日本代表に選出。フットサルW杯には2012年、16年と2大会連続で出場、同大会における日本人最多得点記録を保持している。フットサルスクール「POTENCIA(ポテンシア)」のテクニカルディレクターを務めている。
ミゲル・ロドリゴ
1970年7月15日生まれ。フットサルタイ代表監督。2009年から16年まではフットサル日本代表を率い、2大会連続のW杯出場に導いた。12年大会では三浦知良(横浜FC)を招集して話題になった。フットサルスクール「POTENCIA(ポテンシア)」のメソッドプロデューサーを務めている。
POTENCIA(ポテンシア)
フットサルのスキルを現代サッカーに通用するスキルへと応用するためのメソッドを通して、指導を行うフットサルスクール。稲葉がテクニカルディレクター、ミゲル監督がメソッドプロデューサーを務める。出張レッスンを通じての指導も行っている。詳細は公式サイト(http://potencia.biz)へ。
【了】
石川 遼●文 text by Ryo Ishikawa
神山陽平●写真 photo by Yohei Kamiyama