闘莉王が称賛する二人の天才 中村俊輔と小野伸二の違いはどこにあるのか?

今も忘れられない1本のロングボール

 闘莉王には、今でも忘れられないエピソードがある。

「横浜国際でやった代表戦かな。自分のアシストで(大久保)嘉人がゴールを決めたシーンがあったけれど、翌日のミーティングで岡田さんに『なんであそこに走っていたんだ?』と驚かれた。あの時、俊輔さんがボールを持っていた。あの人が走れば出てくるという確信があった」

 闘莉王がこう振り返ったのは2008年6月2 日、南アフリカ・ワールドカップのアジア3次予選オマーン戦(3-0)で、当時の岡田武史監督も驚愕したワンプレーは生まれた。

 前半22分、中盤からのロングボールに走り込んだのは、最終ラインにいるはずの背番号4だった。相手マーカーとのヘディングでの競り合いに勝ち、フリーで走り込んできた大久保に完璧なボールを落とすと、これを右足でゴール左隅に決めた。

 このシーンで前線に走り込んだ闘莉王の最高到達点に、柔らかいロングボールを入れたのは中村の左足だった。FWのようなアシストを決めた闘莉王はゴール直後、大久保ではなく中村に走り寄った。自陣右サイドのタッチライン際から正確なクロスを放った10番もまた、両手で自分の両目を指差してから闘将と抱き合った。

 その時「見ていたよ」と中村は闘莉王に語ったそうだが、あの場面であのロングパスを通すイメージは、誰もが見える光景ではないという。「あの人はピッチ全体で、今何が起きているのか見えているのだろうね」と闘莉王は、その豊かな才能に脱帽する。

 

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