イライラ→晴れやかな笑顔…1年で激変した鈴木優磨 カメラマンが気づいた表情の変化【コラム】

鹿島の鈴木優磨【写真:徳原隆元】
鹿島の鈴木優磨【写真:徳原隆元】

【カメラマンの目】鹿島から漂う充実感、岡山とのアウェー戦で逆転勝利

 今シーズンの鹿島アントラーズは、閉塞感に覆われていた近年のチーム状況とは、ひと味違うようだ。J1リーグ第11節、鹿島はファジアーノ岡山とのアウェー戦に臨み、2-1で逆転勝利を飾った。試合後、サポーターの前で見せた鈴木優磨の充実した晴れやかな表情は、勝利というこの日の結果だけでなく、主力に怪我人がいるなかでも、開幕からここまでピッチに立つ選手全員で戦えていることの一体感を表しているようだった。(文=徳原隆元)

【PR】DAZNを半額で視聴可能な学生向け「ABEMA de DAZN 学割プラン」が新登場!

 勝利を手にしたとはいえ、この日の鹿島は試合序盤、岡山の激しいマークの前に動きを封じられ、ペースを掴むことができなかった。加えて先制点を奪われる苦しい展開に追い込まれる。

 岡山の厳しいフィジカルコンタクトを受ける展開に、昨年までの鹿島だったら、その激しさに対してクレームをつけるように選手たちが負の感情を露わにしてしまい、そこからチームの雰囲気が悪くなり、自滅するというパターンを辿っていたかもしれない。

 だが、鬼木達監督が示す、勝利への明確な方向性を選手たちが身につけたことで自信が芽生えた今シーズンの鹿島は、対戦相手から激しいプレーを受けても、簡単に集中力を切らすような展開には陥らない。闘志を心の内に留め、岡山を上回る力強いプレーで対抗して見せた。まさにホームで躍動する難敵を、力で捻じ伏せたという表現が符合する逞しさだった。

 鹿島の選手のなかで、特に自信を持ってプレーしているように見えたのが鈴木だ。近年の彼はときに感情を抑えられない態度が目に留まり、そうした行為は見ていてあまり気分の良いものではなかった。だが、今シーズンの背番号40には精神面の充実が感じられる。

 試合中でも思うようにプレーできないことから湧か上がる、イライラとした素振りも少なくなった。終了のホイッスルを聞くと決勝点を記録した殊勲のターレス・ブレーネスに歩み寄って抱擁を交わし、サポーターの前でも同点弾をマークしたチャヴリッチと笑顔を見せていた。チームがうまく機能していない、もどかしさからくる焦燥感はない。

 そして、なにより鹿島の強さをもっとも感じた部分は、この対岡山戦で鈴木がチームの主役になっていなかったことだ。ここ数年の鹿島は鈴木の個人能力に依存するとこが多く、彼が相手のハードマークによって抑えられると、攻守に渡ってチームの流れが停滞してしまう、明らかな弱点があった。

 だが、今シーズンは各選手が自分のポジションで課された仕事を技術、フィジカル、旺盛な闘志を持って的確にこなし、その積み重ねによってゴールが生まれている。決して鈴木ばかりが主役になっていないところが鹿島の強さなのだ。

 チームの安定感はまだ盤石とは言えないが、四の五の言わずにひたすら勝利を目指す戦い方は、鹿島の伝統的なスタイルである。その姿が少しずつではあるが、確実に戻りつつある印象を受けたアウェー戦だった。

page1 page2

徳原隆元

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング