久保建英らが「チームを離れることになるかも…」 スペイン人記者が吐露「だからこそ失望しているんだ」【現地発コラム】

マジョルカ戦で先発復帰の久保は厳しいマークに苦戦、現地メディアが辛口評価
3大会を戦い続けたレアル・ソシエダが、国王杯とUEFAヨーロッパリーグ(EL)から敗退した今、やるべきことは残されたラ・リーガで来季の欧州カップ戦出場権を獲得することだけだ。特に再びEL出場を目指すためにも、4月12日にホームで迎えた第31節マジョルカ戦は、落とすことのできない重要な一戦であった。
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2試合ぶりに先発に復帰した久保建英は、いつもどおり4-3-3の右ウイングでプレー。しかし、マジョルカの5バックとチームの出来の悪さが影響し、好パフォーマンスを発揮できなかった。左ウイングバックのホアン・モヒカの厳しいマークを受け、縦への仕掛けを封じられた。そんな状況下でもセットプレーからチャンスメイクを狙い、シュートを3本打ったが、得点にはつながらなかった。
チームは6割以上ボールをキープし、シュートを倍以上の15本も打つも、チャンスらしいチャンスはあまりなく、浅野拓磨を怪我で欠いたマジョルカに0-2で敗北。順位を9位に落とし、欧州カップ戦出場権争いから一歩後退する結果となった。昨季の国王杯準決勝でPK戦の末に敗れた因縁の相手にリベンジを果たすことも叶わず、サポーターは肩を落としてスタジアムを去っていった。
期待が非常に大きかった重要な一戦を悪い内容で落としたソシエダの選手に対するスペイン各紙の評価は全体的に低かった。久保も例に漏れず、特に地元紙の採点は今季最低と言っていい辛辣なものとなった。
地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」は、「右サイドで戦う姿が見えなかった。前半25分のシュートはゴール上を越えていった。他の試合よりも積極的に中へ入ろうとしていたことから、ルカ・スチッチが下がったあとは、より中央の位置にポジショニングを取るべきだった」と評し、アレックス・レミーロ、ジョン・アランブル、マルティン・スビメンディ、ルカ・スチッチ、アンデル・バレネチェアと並ぶチームワーストタイの1点(最高5点)と厳しく評価した。
同じく地元紙「ノティシアス・デ・ギプスコア」も、「非常に悪い内容の試合だった。ほとんどドリブル突破できず、シュートでチャンスを1度作っただけだった」と寸評し、チーム最低の1点(最高10点)。その他に1点と評価されたのは、前述の「エル・ディアリオ・バスコ」紙とまったく同じ5名だった。
全国紙の「マルカ」「AS」も久保のこの日のパフォーマンスに対し、1点(最高3点)と採点した。

ソシエダ番記者も嘆息「久保とバレネチェアの能力に頼らなければならないが…」
スペインのラジオ局「カデナ・コペ」でこの試合を実況したソシエダの番記者マウリシオ・イディアケス氏は、久保とチームのパフォーマンスはどのように見たのか。
「今日は酷かったよ。スビメンディ、オヤルサバル、バレネチェア、久保、とにかくみんなが本当に悪かった。前線で明確な意図を感じられるプレーがなかったし、特に今季のラ・レアル(レアル・ソシエダの愛称)は5バックの相手に、今日のような酷い試合をする傾向にある。ゴール前で高さを生かしたプレーがなく、攻撃が手詰まりの時にはサイドの久保とバレネチェアの能力に頼らなければならないが、今日はどちらも存在感がなかった。最初の失点は不運もあったが、2点目はレミーロの酷いミスだった」
「久保は今日、優れたウイングバックを擁した非常に強力なディフェンス陣のマジョルカに大いに苦しめられた。対峙したモヒカに抑えられ、思うようにプレーさせてもらえず精彩を欠いていた。今日に関してはこれ以上何も語ることはない」
さらに欧州カップ戦の出場権争いのライバルに悪い内容で敗れたことに憤慨した様子を見せていた。
「ラ・レアルはそれまで2連勝を飾っていたが、その相手は降格圏で苦しんでいるバジャドリードとラス・パルマスだ。実力を測る上でなんの参考にもならない。今日はラ・レアルがどのような状態にあるかを知る上で本当に重要な試合だったのだが……」
「この後、ラ・レアルはビジャレアル、アラベスとの連戦を控えているのに、要のスビメンディはマジョルカ戦で馬鹿げたイエローカードをもらい、ビジャレアル戦に出られなくなってしまった」

久保の来季去就は最終結果次第「欧州カップ戦の出場権を獲得できなければ…」
イディアケス記者はさらに、久保の来季去就について言及。日本ではさまざまな報道が出ているが、ソシエダの地元サン・セバスティアンでは具体的な情報は何も出ておらず、今季の結果次第と考えているようだ。
「欧州カップ戦の出場権を獲得できなければ、来季のメンバー構成は非常に難しくなる。そうなると移籍の噂があるスビメンディが退団する可能性は大いにあるし、久保を含む主力選手が予想よりも多くチームを離れることになるかもしれない。だからこそ、私は今のラ・レアルの現状に大いに失望しているんだ」
「残り7試合の日程は恐ろしいものだ。ビジャレアル戦、アラベス戦の後には4位につけるアスレティックとのバスクダービーがあるし、アトレティコ・マドリードやレアル・マドリードとのアウェーゲームもまだ残しているから、来季再び欧州カップ戦に出場できるかどうかを大いに懸念しているよ」
イディアケス記者はチームの将来を憂慮しているが、スペインは来季のUEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場枠が増え、EL出場権は6位と7位のチームに割り当てられる可能性が高い。9位ソシエダと6位ベティスとの勝ち点差は7あるが、7位セルタとの勝ち点差はわずか2。強豪との対戦がいくつも残されているが、まだ自力で上を狙うチャンスは十分残されている。
高橋智行
たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。