Jクラブ争奪戦も…筑波大進学「土台を築いてから」 U-20日本代表に高3で選出の超逸材

筑波大学の布施克真「将来は遠藤航選手のような攻守に貢献できるボランチに」
プレーの安定感、試合後のコメントを聞いてもとてもルーキーとは思えない。筑波大学の1年生DF布施克真は、関東学生サッカーリーグ1部で右サイドバックとして開幕スタメンを飾ると、第2節の流通経済大戦ではフル出場。第3節の日本体育大戦では大学初ゴールを叩き込むなど、無敗で首位を走る筑波大に欠かせない存在になっている。
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「本当にいい経験をさせてもらっているのですが、1年生はもうお客さんじゃないですし、僕ができることを出していかないといけないと思っています」
日大藤沢高時代から彼は一言で表すと「大人」だった。物事を俯瞰して見ることができ、コミュニケーションスキルも高い。さらに冷静さを持ちながらも、球際での戦いや試合の中で本能剥き出してプレーすることができる熱量も兼ね揃えている。
それゆえに周りからの信頼度も高く、日大藤沢では1年から出番を掴み、U-15日本代表に選ばれると、2年時にはU-17W杯(インドネシア)のメンバー入り。それ以降もコンスタントに年代別日本代表に名を連ね、今年2月にはU20アジアカップ(中国)に参加するU-20日本代表に高校3年生で選出された。
本職はボランチだが、U20アジアカップではサイドバックとしてグループリーグ第2戦のシリア戦でスタメン出場。第3戦の韓国戦、U-20W杯出場権がかかった準々決勝のイラン戦で途中出場をした。敗れた準決勝のオーストラリア戦でスタメン出場。5試合中4試合に絡んだ彼は、持ち前の豊富な運動量と守備の安定感、機を見た攻撃参加とサイドでチームのアクセントになるプレーを見せ、その信頼度の高さを実証した。
当然、いくつかのJクラブは獲得に動き出していたが、「日藤に入った頃はまさか自分がプロに興味を持ってもらえる選手になるなんて思ってもみませんでした。でも、今の僕は焦らずに大学でフィジカルや技術、周りとのコミュニケーション力に加えて、サッカーを多角的な視点で見ながら学ぶことで、プロで戦える土台を築いてからでも遅くはないと考えました」と、筑波大進学を決めたのも、実に彼らしい決断だった。
そして、筑波大では前述したとおり、ボランチではないが、右サイドバックとして早くも周りから絶大な信頼を掴み取っている。
1-1のドローだった流通経済大戦では、後半に右からの正確なクロスで2つの決定機を作り出す。2-1で勝利した日体大戦では、20分にペナルティーエリア中央右寄りの位置でFW内野航太郎が、相手を背負いながらボールキープする間に左サイドのスペースに回り込む。完全にフリーになった状態で内野からのパスを受けると、ブロックに来たGKの位置を冷静に見極めて正確なシュートをゴール左隅に蹴り込んだ。
「試合中にゾーンに入ると、『ここにボールが来るな』という予測が浮かんで、自分の身体が勝手に動いていく。集中力が高い時にしか出せないプレーを大学の試合ですぐ出せたのは良かったと思います」
大学生活の好調な滑り出しを見せているが、安心しているような暇は彼にはない。
「ずっと頭の中でU-17W杯に帯同しながらも1分も出られなかった悔しさが残っていて……。あの時はアジア最終予選を経験せずに、W杯に選ばれた形だったので、どこか『仕方がない』と思うところもありましたが、今回はアジア最終予選を経験したからこそ、よりどうしてもU-20W杯のピッチでプレーしたいという気持ちが強いんです。もちろんまずメンバーに選ばれないといけないし、選ばれたら絶対に試合に出ないといけない。
W杯での借りはW杯でしか返せないものがあるからこそ、今この1日1日が本当に無駄にできないですし、もう何個も何個もやるべきことがあると思っています。それに将来は遠藤航選手のような攻守に貢献できるボランチになりたいと思っているので、今右サイドバックで学べることはどんどん学びたいし、仮にここ(右サイドバック)が天職になっても、より上を目指せる存在になりたいと思います」
スラスラと思いを言葉にできる彼のビジョンは現実的でありながら、壮大さもある。布施は周りの声には惑わされることなく、ただひたすらに己の道を切り開く。
(FOOTBALL ZONE編集部)