“スーパー中学生”挫折から「手応え」 高2で強豪10番&J1練習参加…高卒プロへ成長

昌平の山口豪太【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】
昌平の山口豪太【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】

昌平高10番を背負う山口豪太「メンタルの部分でも手応えを得た1年でした」

 幼かった顔つきが逞しさを増した。1年時からエースとして期待され、2年生の時から昌平高の10番を背負ってきたMF山口豪太は、最高学年を迎え、心身ともに成長の跡を見せている。

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 ずば抜けた精度を持つ左足のコントロールとパス、抜群のボディーバランスで相手を交わしていくドリブルが特徴の山口は、中学時代から大きな注目を集める選手だった。昌平の下部組織にあたるFC LAVIDAで絶対的な存在だった彼は、中学2年生から10番を背負い、ボールを持ったら止められない存在だった。

 2021年の高円宮杯JFA全日本U-15サッカー選手権でクラブ史上最高成績となる準優勝に大きく貢献すると、翌年の3月のJヴィレッジカップでは中学2年生で昌平の10番を背負って出場し、高校生を相手に4人抜きのドリブルを披露するなどインパクト絶大のプレーを見せ、注目を集めた。さらに一昨年は中学3年生ながら昌平のトップチームでプリンスリーグ関東1部に出場するなど、エリート街道を歩んできていた彼が、1年生から出番を掴むことは何も違和感がなかった。

 しかし、ここから彼は苦しんだ。ドリブルを止められるようになったり、今まで比較的自由にやれていたが、チームプレーとの狭間で悩んだり、壁にぶち当たった。

 プレミアリーグEASTでは14試合に出場をしたが、出場時間は459分の出場にとどまり、選手権埼玉県予選決勝ではスタメン出場をするが、前半で交代という屈辱を味わった。選手権でも1回戦でスタメンを果たすが、前半のみの出場で、2回戦と3回戦は出番なし。敗れた準々決勝の青森山田戦で残り18分の出場に留まった。

「中2、中3では周りが自分に合わせてくれていたのが、高校になって自分が合わせにいかないといけなくて、そこにうまく対応できなかった自分がいました。当たり前のように試合に出られていた立場から一気に出られなくなって、当然悔しい気持ちはあったのですが、それをうまく自分の力に変えられないまま時間が過ぎてしまった」

 王様タイプの選手がぶち当たる壁。だが、彼は折れなかった。

「やれないことというより、やろうとしないことが多かったことに気づきました。そのままでは成長しないと思った。自分が持っている甘さを捨てないといけないと思いました。毎試合安定したアベレージでプレーし、かつ同じメンタリティーでプレーできるようにすることを意識するようになりました」

 時間はかかったが、必死で自分と向き合い続けた。結果、昨年は右サイドを中心に武器である左足のキックとドリブルをチームのベクトルを前に向けるために発揮。個性的な選手が揃う周りを信頼して、パスでリズムを作り出したり、クロスでアシストをしたりと献身的なプレーが光った。

 全国初優勝を果たしたインターハイでは、エースたる働きを見せた。1、2回戦で連続2アシストをマーク。3回戦で負傷し、準々決勝と準決勝は途中出場となったが、神村学園との決勝戦ではスタメンに復帰して1アシストをマーク。大会通算5アシストで優勝に大きく貢献をした。プレミアリーグEASTでも4ゴール3アシストでプレミア残留を果たすなど、調子が上がっていく中で迎えた選手権予選で大きな落とし穴が待っていた。

 埼玉県予選準々決勝で聖望学園に3-4の敗戦。2冠の夢は早々に潰えてしまった。

「悔しかった。やっぱりもっと甘さを捨てないと上にはいけないと痛感しました。でも、昨年は個人的には1年生の時よりもやれることが増えて、メンタルの部分でも手応えを得た1年でした」

 最高学年を迎えた今年、彼は「よりハイアベレージを出せる選手、メンタルも安定した選手になる」という「あるべき姿」を掲げて前に進もうとしている。

 プレミアEAST第2節・流通経済大柏戦。この試合、彼はボランチで出場をすると、前線からのハイプレスと2重、3重の攻撃を仕掛けてくる相手に対して、鬼気迫る表情でプレスに行ったり、球際を激しく寄せたりと守備面で奮闘を見せた。

 だが、相手の勢いに飲まれる形で前半だけで2失点。それでも後半19分に山口は右からのクロスを正確なトラップでコントロールすると、相手を背負いながら鋭い反転シュートを放つが、これはGKのセーブに阻まれた。後半38分にも失点し、結果は0-3の完敗だったが、劣勢の中での彼の攻守に渡るハードワークは確かな成長を感じ取ることができた。

「今日、ボランチで行くかもと言われていて、攻撃が特徴のチームが相手だと分かっていたので、守備から入ろうと思いました。サイドよりも真ん中をやる機会が多くなって、トップ下では前からのプレス、ボランチではスライドやプレスバックなど、守備の意識は上がってきていると思います。

 今年は真ん中のポジションでアシストだけではなく得点を増やしていきたいし、自分が前線でボールを収めて、もっと裏を取るなどしてボールを引き出せる選手になりたいです」

 1年時からJ1クラブの練習に参加し、今年も別のJ1クラブの練習に参加。徐々に高卒プロを目指す自分のあるべき基準も見えてきた。

「(練習参加で感じたのは)守備のカバーの位置だったり、ポジショニング1つ1つだったり。いつもは絞っていないところできちんと絞らないとチーム全体に迷惑をかける。細かいポジショニングには意識するようになりました」

 紆余曲折が詰まった高校サッカー。ラスト1年、彼は自分に明確な課題を課してまっすぐに目標に向かって突き進む。

(FOOTBALL ZONE編集部)

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