「明けない夜はない」代表DFが味わった“ジェットコースター”のような1年「だから面白い」【インタビュー】

インタビューに応じたルートンの橋岡大樹【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】
インタビューに応じたルートンの橋岡大樹【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】

東京五輪世代の活躍が刺激「俺も頑張らないと」

 イングランド2部ルートン・タウンに所属する日本代表DF橋岡大樹が、「FOOTBALL ZONE」のインタビューに応じた。自身を奮い立たせてくれる存在や1年後に迫った2026年北中米ワールドカップ(W杯)への思いを明かした。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・井上信太郎/全3回の3回目)

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 海外でプレーするということは、孤独と闘うことでもある。家族を同伴していない独身の選手であれば、それはなおさら。シント= トロイデンでは同僚に日本人がいたが、ルートンでは自然と一人の時間が長くなる。それもサッカーがうまくいっていれば、気にはならないが、試合に絡めない現状では、常にサッカーのことが頭から離れない。

「サッカーをやっていないと、こんなにつらいんだなって感じですね。なんか本当に生きた感じがしないし、何やっててもサッカーのことが浮かんじゃう。シントの時は日本人同士で、こうこうこうだよねとか話しができましたけど、今はできないので。楽しいことしようとしても、うわサッカーがな、サッカーがなって思っちゃう。逆を言えば、それほどサッカー好きなんだなと思います」

 そんな時でも、まわりの日本人選手たちの動向はいやでも耳に入ってくる。特に自身も出場した東京五輪世代の仲間たちが活躍している姿を見る度に「俺は何やってんだろう」と焦る気持ちがものすごく出てくるという。だがそれ以上に奮い立たせてくれるものがある。

「やっぱり意識しますし、今もうみんなすごいじゃないですか。(所属している)チームも豪華になっていますし。同世代がクラブや代表で活躍しているのは刺激になるし、嬉しい反面、俺も頑張らないといけないなと思わせてくれる。お互い刺激のし合いにはなっていますよね。だからこそ、今の日本代表はめちゃくちゃ強いと思います」

 手を差し伸べてくれる存在もいる。一緒に東京五輪にも出場した1歳上の堂安律(フライブルク)だ。ルートンに移籍する際にもアドバイスを送ってもらうなど、公私にわたり世話になっている。

「堂安選手ってあんな感じに見えて、すごく優しいんで。『大丈夫か?』みたいな感じで連絡入れてくれるんです。『試合出てないじゃん』とかちょっと茶化しの部分を入れながらも、気にかけてくれてはいるので。本当に困った時に、こうこうこうだから、っていうのを真剣に答えてくれるところもあって、俺はものすごく堂安選手には感謝してます」

心に刺さった「明けない夜はない」という言葉

 記憶にある最初のW杯は2006年のドイツ大会。当時7歳だった橋岡少年は画面越しに繰り広げられる日本代表の姿に心を奪われた。それから4年後の南アフリカ大会を見た際には、いつか日本代表になりたいと誓った。

「2010年の南アフリカの時はものすごい残ってますね。あの時にやっぱりW杯出たいなというのを一番に思いましたし、その舞台に立って勝ちたいって思いましたね。本田圭佑さんのあのフリーキックもそうですけど、W杯で活躍している選手はやっぱりインパクトがあるじゃないですか。W杯って人の人生を変えられるなと。まずはそこの舞台には立たないことは始まらないですから」

 そのW杯までは残り1年2か月と迫っている。だが1年2か月前は、ベルギーから世界最高峰のプレミアリーグでプレーするという夢を実現したばかりだった。橋岡が経験した“ジェットコースター“のような1年2か月を考えれば、これからの1年2か月でどんなことでも起こせる。

「これがW杯の年の3月とかだったらかなり厳しい状況ですけど、あと1年あるんで。逆に幸運かなと思います。それこそ、1年で本当に大きく変わると思うんですよ。サッカー人生って。例えば、1年どこかのチームでめっちゃ活躍して、そしたら本当にそこのチームに行くのっていうパターンもあるじゃないですか。中村敬斗選手だって、オーストリアでやっていましたけど、あそこでめっちゃ活躍して、スタッド・ランスに行って、今ランスでも活躍していて。そう、だからサッカーって面白くて。本当に今は出られていないですけど、1年で見返せるチャンスもあるんで。1年でどうにも変えられる。

 この間、TikTokを見ていた時に『明けない夜はない』っていう言葉を見たんです。本当そうだなって。明け方はどうであれ、信じてやるしかないですね」

 話を終えてカフェの外に出ると、あたりはすっかり暗くなっていた。だが先ほどまでポツポツと降っていた雨は、すっかりあがっていた。車に乗り込む前、こう言った。

「1年後、もう一回来てください。その時に『あの時があってよかった』と言えるように頑張ります」

 やっぱり、この男には悩んでいる顔より、笑顔がよく似合う。

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