欧州最高峰の濃密な半年も…「誇りに思っていない」 遠ざかった代表で生きる道「求められている」【インタビュー】

憧れだったプレミアリーグで半年間プレーした
イングランド2部ルートン・タウンに所属する日本代表DF橋岡大樹が、「FOOTBALL ZONE」のインタビューに応じた。開幕前の負傷をきっかけに、所属クラブでは満足に出場できない日々が続いている。それでも昨年プレーしたプレミアリーグで得た経験を武器に“日本代表で生きる道”を探っている。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・井上信太郎/全3回の2回目)
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1年前、橋岡は世界最高峰の舞台にいた。2024年1月31日、ベルギー1部シント=トロイデンから、プレミアリーグのルートン・タウンに電撃移籍。移籍市場が閉まるギリギリのタイミングだった。
「それまで何度か移籍できそうなタイミングがあったんですけど、上手くいかなくて。あの時も何個かオファーはあったんですけど、プレミアか、これは行くしかない、もう挑戦するしかないと思って決めましたね」
刺激しかない半年だった。マンチェスター・シティFWアーリング・ハーランドをはじめ、数々の猛者と戦い、跳ね返され続けた。チームは18位に終わり、1年で降格となったが、自身は10試合に出場。世界のトップと戦ったことで“ものさし”ができた。
「それが一番です、俺の中では。結果がどうだったというよりも自分に足りないものがすごい見つかったなって。自分の中で整理できて、現状は自分がここにいるんだなと分かった。まあ言っても半年ですし、プレミアでプレーしたことは、そんなに誇らしくて思ってない。それこそ三笘選手や遠藤選手、吉田麻也選手や岡崎慎司選手、香川真司選手みたいにああやって何年間もずっとプレミアでやっていた選手が、プレミアでやったというのは分かりますけど、俺は1年もやってないんで。自分の中で誇りに思っていないです」
練習から衝撃を受けた。184センチの長身ながらスピードやスタミナなど、日本人離れしたフィジカル能力には自信があった。ベルギーでもそこまで驚くことはなかった。だがイングランドでは、今までの武器が通用しなかった。イングランドに渡った時は79キロだった体重は、今や83キロまで到達した。
「レッズの時はフィジカル面でも、1対1も全然負ける気しなかったですし、今代表でやってもあまり負ける気はしないです。それこそスプリント練習とかの時も、ベルギーでも負けることはあんまりなかったんですけど、今はもちろん上のほうにはいるんですけど、俺より速い選手なんてまあ普通にいるんで。シント=トロイデンではチームメイトで自分より速い選手は1人、2人でしたけど、今のチームなんてやっぱり、自分より上に5、6人くらいいるんで。だからやっぱりフィジカル面では違いがありますし、それこそプレミアのチームなんてもっとすごいわけで。逆に火はついていますね」
日本代表での生きる道「自分に求められていることなのかな」
くしくも、この日は3月に行われた北中米W杯アジア最終予選2試合(バーレーン戦、サウジアラビア戦)に臨む日本代表メンバーが発表された日だった。プレミアで手にした“世界トップの基準”をもとに成長を遂げ、代表でも主力を担うことを思い描いていた。だが怪我に苦しめられ、現実は理想とかけ離れたものになった。
「いや、そりゃ悔しいですよ。去年の3月、6月と代表には入っていて、さあ9月からの最終予選という所で、7月にふくらはぎを怪我してしまいましたから。11月にやっと代表復帰して、試合(インドネシア戦、中国戦)にも出て、今回の3月は絶対出ようと思っていたところで、今のこの状況というのはすごくもどかしいですよね」
カタール大会後の第2次森保ジャパンでは、怪我の離脱以外の期間は常に選ばれてきた。さらにアジア最終予選では3バックを採用。センターバックも、ウィングバック(WB)もできる25歳は、重宝される可能性があった。実際、唯一参加した11月の活動では、インドネシア戦は3バックの右でフル出場、中国戦は右WBで後半途中から出場した。
「インドネシア戦に3バックでフル出場して、その後の中国戦での使われ方というのが、今自分に求められていることなのかなというのがあって。中国戦では後半に相手がロングボールを蹴ってくる中で、WBの選手を守備的な選手にするとなった時に、(森保監督が)僕を入れてくれた。スタメンの時はこういう役割、途中から出た時はこういう役割とはっきりできるなとは思いましたね」
圧倒的な強さを見せたアジア最終予選では、右WBには攻撃に特徴のあるMF堂安律、伊東純也、菅原由勢らが起用された。だが8度目の出場が決まった本大会では、確実に守備に回る時間が増える。スピード、高さ、守備力、そしてプレミアで体験した世界トップの基準を知る25歳は、W杯では必ず必要なピースになる。そのためには自らの課題も理解している。
「出番が回ってきた時に自分のプレーをどういう風にできるかが試されると思っています。メンタルがいい時はめちゃくちゃいいプレーができますけど、自信がない時のプレーは自分の中でも分かるので。遠藤(航)選手は(リバプールで)途中から入ってきて、毎回素晴らしいプレーしていますけど、そのメンタルってやっぱりもの凄い難しいと思うんですよ。それをどうにか直さない限り、俺はこれ以上、上には行けないと思うので」
日本代表での生きる道。橋岡にしかできない役割が、そこにはある。
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