橋岡大樹から消えたトレードマーク「生きた心地がしない」 英2部で負の連鎖…直面した人生初の“1か月”【インタビュー】

インタビューに応じた橋岡大樹【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】
インタビューに応じた橋岡大樹【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】

今季は橋岡大樹チャンピオンシップで17試合の出場にとどまっている

 イングランド2部ルートン・タウンに所属する日本代表DF橋岡大樹が、「FOOTBALL ZONE」のインタビューに応じた。開幕前の負傷から歯車が狂った25歳は「プロになってから今が一番きつい」と悩める心境を吐露。2026年北中米ワールドカップ(W杯)まで残り1年あまり、どん底からの復活を誓った。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・井上信太郎/全3回の1回目)

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 光が差し込む隙間がないほど、分厚い雲に覆われたロンドンの郊外。小さなカフェに現れた男からトレードマークが消えていた。

「今は笑顔が振り撒けないんです。正直、生きた心地がしないというか。俺、今何やってんだろうなって」

 3月中旬に怪我から練習復帰したにも関わらず、ベンチ外が続く日々。来月に26歳を迎える橋岡大樹にとって、人生最大の試練が訪れている。

 歯車が狂ったのは開幕前の7月のことだった。昨季プレミアリーグで戦っていたチームは18位に終わり、1年でチャンピオンシップに戻ることになった。昨年1月、ルートンに完全移籍したばかりの橋岡は、移籍を封印して、ルートンで勝負することを誓って臨んでいた。だが7月16日に行われた練習試合で左ふくらはぎを負傷。復帰まで約3か月を要する長期離脱となった。

「いやもう、正直かなりへこみました。うわ、なんでこの時期に?っていうのが最初で。代表も9月から最終予選が始まるのは分かっていましたし、これからやるぞというタイミングではあったので。でも乗り切るしかないと思ってやったんですけど…」

 復帰したのは10月19日のリーグ10節・ワトフォード戦。後半開始から出場すると、3-0の勝利に貢献した。その翌週からはスタメンを勝ち取った。手応えを感じていた。プレミアリーグが舞台だった昨季は、守備陣に負傷者が多かったこともあり、3バックの一角で出ていた。だが今季は「自分がいいパフォーマンスを出せる」と自信を持っていたウィングバック(WB)で起用されることが増えた。

「怪我から復帰して自分の体がすごい動くようになって、試合でも出させてもらって。もちろん3バックもできますけど、自分の中ではずっとWBでやってきたので。攻撃にも出ていけるし、守備でもアップダウンできますし、そこのやりがい、やりやすさはありましたね。去年のプレミアの時より自分の良さが出せてきて、いい感じで来ていたんですけど…」

 だが自身の調子とは裏腹に、チームは開幕から低空飛行を続けた。橋岡がスタメンで出ていた12月中旬に一時は15位まで浮上したが、20位前後を彷徨うことが当たり前になった。1年でのプレミア復帰を目指していたはずのチームは、いつしか降格を気にするようになっていた。

「何が良くないのか、もう分からないですよね。プレミアで戦っていたメンバーから大きくは変わってないですし、去年のプレミアの時からもう負け癖がついているのかなと思います。チャンピオンシップは日本ではあまりレベル高いと思われてないかもしれないですけど、フィジカル的には本当にレベルが高い。資金力があるクラブも多いですし、選手補強もするので、競争も本当に激しいと思います」

プロ生活で一番きつい時期をどう乗り越えていくか【写真:IMAGO / Pro Sports Images】
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「この1か月でサッカー人生を大きく変えてくれたなという風にしたい」

 さらに負の連鎖は続いた。1月中旬にロブ・エドワーズ監督が成績不振で解任され、マット・ブルームフィールド新監督が就任。1月19日のプレストン戦から3試合連続で先発で使われたが、2月中旬に今度は膝を痛めて欠場を余儀なくされた。3月上旬に練習には復帰したが、ここまで試合に絡めず、ベンチ外の状況が続いている。

「正直、プロになってから今が一番きついですね。試合に出ている時は自然と笑顔になったりしますけど、今はもう悔しすぎて、練習でもいつもみたいに明るく『イェーイ』みたいな感じではできないです。もう今は練習の中でも、チームメートではありますけど、アピールするために蹴散らしてやるしかないという感じで、バチバチやることしか考えてないです」

 これまで試合に出られない経験はほとんどしたことがなかった。浦和レッズでは高卒1年目から25試合に出場。翌2019年はふくらはぎを負傷し、U-20W杯を欠場したことがあったが、それ以外では浦和でも、ベルギー1部シント=トロイデンでも、レギュラーとして試合に出続けてきた。

「この夏に日本に帰ることも色々できるとは思うんですけど、俺は絶対後悔するなと思っていて。それこそ周りからしたら、まだ(復帰してから)ベンチに入ってないの数試合でしょって不思議かもしれないですけど、その数試合が俺の中でとてつもなく長いんです。でも諦めずにやればチャンスは必ず来ると思うんで。ここで不貞腐れて投げ出す選手だったら、今後どこに行っても無理だと思うので。そうはなりたくないんです」

 進むべき道を見失わないで済むのは、子供の時からの夢だったW杯が1年2か月後に迫っているからだ。2022年カタール大会の時はまだ遠く感じたが、今回の北中米大会は「出なければいけない」大会として捉えている。

「自分の中では正直つらい時期ではありますけど、1年後のW杯にどう遠回りしても、そこにたどり着くことが今の目標。そこに向けてやるしかないとは思ってます。今はこういう現状ですけど、がむしゃらに足掻いて足掻いていきたい。このシーズンが終わるまでの1か月、練習から死ぬ気でやりたい。俺のサッカー人生を逆に大きく変えてくれたなという風にしたいと思っています」

 まだ橋岡の目は死んでいない。もがき、苦しんだ経験は、必ず北中米の道に通じている。

【インタビュー第2回】欧州最高峰の濃密な半年も…「誇りに思っていない」 橋岡大樹が日本代表で生きる道「求められている」

(FOOTBALL ZONE編集部・井上信太郎 / Shintaro Inoue)



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