ベンゲルお墨付きの日本人 名将からの金言で開いた指導者への道「絶対に生かさなきゃいけないよ」【インタビュー】

喜熨斗勝史氏が唯一の日本人として参加…欧州最高峰の指導者たちと意見交換
マレーシア1部セランゴールで監督を務める喜熨斗勝史氏はセルビア代表のコーチとしてワールドカップ(W杯)やEURO(欧州選手権)といった大舞台を経験するなど日本人としては他に例を見ないキャリアを歩んできた。その経験と実績は欧州トップレベルの指揮官たちからも認められるものだった。(取材・文=石川 遼/全4回の3回目)
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喜熨斗氏はJクラブでコーチを歴任し、2008年にはドラガン・ストイコビッチ監督率いる名古屋グランパスでリーグ制覇も経験した。その後、中国の広州富力、セルビア代表でもストイコビッチ監督の下でコーチを務め、セルビアでは2022年のカタールW杯と2024年のEURO本大会にも参加した。
EUROの開幕前には出場24か国の監督とヘッドコーチが一堂に介する「ファイナリスト・ワークショップ」がドイツのデュッセルドルフで開催された。フランス代表のディディエ・デシャン監督やイタリア代表のルチアーノ・スパレッティ監督など錚々たる顔ぶれが揃うなか、その場所にいた日本人は喜熨斗氏のみ。EURO本大会のグループリーグでセルビアと同組だったイングランド代表を率いるギャレス・サウスゲート監督とは意見交換を行って交流を深め合い、印象的な言葉をかけられたという。
「あの場所に日本人がいたことはこれまでに一度もありませんでした。サウスゲート監督は私にとても興味を持ってくれて、『キノさん、あなたがここにいるのはあなたが思っている以上に大変なこと。あなたのこの経験は絶対に生かさなきゃいけないよ』と言われました。そう言われたのもあって、やっぱり監督としてやっていかなきゃいけないという思いが強くなりました」
これまでコーチとして指導者のキャリアを積んできた喜熨斗氏だが、サウスゲート監督からの言葉でチームを率いることへの意識が高まったという。そして実際に昨年、マレーシアのセランゴールで監督に就任。新たなキャリアをスタートさせた。
また、カタールW杯前に行われた同様のワークショップでは、あのアーセン・ベンゲル氏からもお墨付きをもらった。
「カタールW杯前の会議ではグループディスカッションの場がありました。そこで私が発表をしていたら、何やらみんなが笑っているんです。なんでだろうと思って、みんなの視線の先を振り返ってみたら、うしろにベンゲルがいたんです。『キノの話を聞きにきたんだ』と言って、私の発表のあとには『彼が言っていることは素晴らしい。そのとおりだ』と言ってくれた。こういった貴重な経験を日本サッカーにどう還元するかというところが今後の目標の1つになっています」
セランゴールでは就任1年目からチームをリーグ2位に導き、来季のACL2出場権を獲得。さらに国内カップのマレーシアチャレンジカップでは見事優勝を果たすなど、さっそく結果を残した喜熨斗氏。欧州でも認められたその手腕をいずれはJリーグでも発揮することになるだろうか。
(石川 遼 / Ryo Ishikawa)