ピクシーの“右腕”が実感…日本サッカーとの大きな違い「理解していないと欧州選手を指導できない」【インタビュー】

喜熨斗勝史氏がセルビア代表で感じた「マインドセット」の違い
マレーシアのセランゴールの指揮を執る喜熨斗勝史氏は、セルビア代表でドラガン・ストイコビッチ監督のアシスタントコーチを4年半にわたって務め、2022年カタール・ワールドカップ(W杯)や2023年の欧州選手権(EURO)に日本人で初めてコーチとして参加した。欧州各国のトップリーグでプレーする好タレントを擁するセルビアの選手が持つ「マインドセット」に日本サッカーとの違いを感じたという。(取材・文=石川 遼/全4回の2回目)
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喜熨斗氏は2008年、ストイコビッチ監督体制の名古屋グランパスに入閣。その後、2015年からはコーチ兼ユースアカデミーのテクニカルディレクターとして中国の広州富力、そして2021年からコーチとしてセルビア代表でストイコビッチ監督とともに働いてきた。
セルビア代表では2022年のカタールW杯、そして2023年のEUROの本大会を経験。日本人指導者として他に例を見ないキャリアを歩んできた。日本のサッカーとは違いを感じたというなかで、特に「失敗」に対する考え方の違いは大きかったという。
「セルビアサッカーのレベルに関して、単に高い・低いや良い・悪いということではないですが、日本とは違うレベルのサッカーをしているなというのが率直な印象です。セルビアに行ってすぐに感じたのはプレーや思考のスピード、考え方、戦い方のアプローチ、戦術の構築の仕方などが日本とは大きく異なっていたことです。そのなかでも失敗の考え方については大きく異なると感じました。
チャレンジしたうえでの失敗を責める人はセルビアにはいません。『もっと失敗しろ。失敗しなければ成功はしない』という考え方が根底にあります。もちろん、失敗し続けていいわけではないし、そこには責任も伴います。ただ、その責任に対する考え方も『失敗しないことが責任感が強いことではなくて、失敗をして上手く立ち直ることが責任感が強い』という考えなんです。そういう彼らのマインドセットも込みで理解していないとヨーロッパの選手を指導できない。ストイコビッチ監督が私をセルビアに連れてきたのも、名古屋や中国での経験から、私がそういったマインドセットを理解していることが理由だったと思います」
熾烈な欧州予選を勝ち抜いてW杯やEURO本戦にも出場してきたセルビア代表。失敗を恐れず、そして失敗から学んですぐに立ち直れるメンタリティーが彼らの強さを支えているようだ。
(石川 遼 / Ryo Ishikawa)