中村敬斗が感じた「敵わないかも」 2桁得点達成、5大リーグで磨き上げた“ギラギラ”【コラム】

中村敬斗は仏リーグで日本人初の記録を達成
フランス1部スタッド・ランスに所属する日本代表FW中村敬斗が4月11日、リーグ・アン第29節RCランス戦(2-0)で2ゴールをマークし、今季11点目に乗せた。同リーグではMF南野拓実(9得点)を上回っての日本人最多ゴール記録を更新。18歳で欧州移籍を決意し、4か国目でたどり着いた5大リーグでの偉業を成し遂げた。
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24歳が救世主へ。残留争いを繰り広げているチームにとって勝ち点3が必要な状況で、中村が2ゴールを挙げた。前半33分に左クロスが1度は弾かれるも、2度目のクロスにダイレクトで合わせた。さらに後半43分には終盤にもかかわらず全力のスプリントで足を攣りながらもダメ押し弾。これが今季11ゴール目で、日本人初の同リーグ2桁得点を達成した。
2018年、高校2年生でガンバ大阪に飛び級入団。当時のレヴィー・クルピ監督に才能を認められ開幕戦でいきなりデビューを飾った。わずか2週間後にはルヴァンカップ浦和レッズ戦で衝撃の60mドリブル弾でプロ初ゴールをマークした。華麗なるプロへの道がスタートしたかと思われたが、決して順風満帆なわけではなかった。
プロ2年目にオランダ1部トゥウェンテへ移籍。デビュー戦で移籍後初ゴールを決めた。トゥウェンテではセカンドチームで出場することもあったが「腐らない。腐っていたらマイナスしかない」と自分自身に言い聞かせて、ステップアップを諦めなかった。そこからベルギー1部シント=トロイデンに渡ったが、ここでは「一番キツイ時間だった」となかなか試合に絡むことができなかった。その時に磨いたのが走力。武器のドリブルを生かすために、ベルギーのトレーナーについてもらって上体を起こした姿勢で徹底的に走り込んだ。
オーストリア1部のLASKリンツでは2022-23シーズンに14ゴールを挙げて一気に注目を浴びた。23年に日本代表入りし、負傷を除いてすべて招集されるという“常連”の仲間入りへ。A代表では16戦8得点。森保監督は中村について「ギラギラがいい。常にハングリーだと思う。1回1回、生きるか死ぬか、生き残りを懸けて代表があると本人が分かっている」と評価していた。

森保監督が評価した「ギラギラ」に本人の心境は
目標の1つだった5大リーグに移籍してすぐ、中村が漏らした一言があった。「向上心とかやる気とかもちろんあるんですけど、僕ギラギラをコントロールできるようになったんですよね。自分に似合うギラギラを見つけられるようになったんですよ」。フランスで身につけたのがメンタル面だった。
元々、メンタルが弱かったわけではない。10代の頃から強い気持ちを保てるタイプだった。ただ、G大阪時代にある選手を見て「この感じ敵わないかも」と感じたという。
「亮太郎くん(食野)のギラギラしている感じとか見て、すごいな、って。(当時の)憧れやった律くん(堂安)とかもそう。このキャラ、自分に出せるのか……と思った。でも自分も生き残りたい。亮太郎くんとは違っても、自分らしいギラギラをようやくここ(ランス)に来て、5大リーグに来られて掴めた気がするんですよね。控えに回っても紅白戦でやる時は『強い方が強い』と、主力を食ってやろうと思ってやれたり、自分自身にフォーカスしたギラギラを出す、コントロールできるようになった」
チームが残留争いを繰り広げていても、自分がゴールすれば勝ち点を奪える、そう矢印を自らに向け続けてきた。積み重なっての11ゴール。2年目で成し遂げた偉業の源は中村らしい“ギラギラ”にあった。