俳優の兄とは「いつも喧嘩してました」 小さい頃に憧れた背中…三笘薫を支える“家族”の存在【インタビュー】

「負けず嫌いなので、兄とは一緒に遊べば喧嘩していた」
イングランド・プレミアリーグのブライトンに所属する日本代表MF三笘薫が、「FOOTBALL ZONE」のインタビューに応じた。小さい頃から目標にしてきた“兄”の存在や、自身を支えてくれる「チームみとま」への感謝。様々な思いを背負い、来年の北中米ワールドカップ(W杯)へ向かう。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・井上信太郎/全4回の4回目)
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今や日本サッカー界をけん引する立場になったが、小さい頃は川崎・鷺沼で育ったごく普通のサッカー少年だった。憧れであり、目標は常に3つ上の兄。家の中ではリビングと隣の居間をつなげた“グラウンド”に小さなゴールを置いて、兄弟で1対1を繰り返した。
「兄は僕よりサッカーが上手くて、たぶん選抜ぐらいまで行っていたと思うんですけど、一緒に1対1やシュート練習をやっていてもやっぱり勝てなかったですね。悔しい気持ちもありながら、『なんでうまいんかな』とか、そういう尊敬もありました。まあ、でもずっと喧嘩ばっかりでしたね(笑)。僕自身も負けず嫌いなので、一緒に遊べば喧嘩はしていた感じはありますけど、そういうエピソードは覚えていますね」
背中を追い続けた兄は、今は俳優の結木滉星さんとして活躍。数々のテレビドラマやCMにも出演している。その姿は、遠く離れた異国にいる“弟”にとって、今も大きな存在であることに変わりはない。
「サッカーは辞めましたけど、芸能の方の世界に行って、そこでも努力して、今もいろんなところに出ているので。やっぱりどの業界でも本当に簡単なことじゃないと思うので、すごいなと思います。そういう部分も、お互いに負けず嫌いなので、今も刺激し合っているかなと思います」
プレミアで、そして日本代表で活躍するようになった今は、家族で会える機会も少なくなった。それでも以前と変わらず、三笘家の家族LINEは今も頻繁にやり取りがある。小さい頃から常にサポートしてくれている家族との“ルーティーン”は今も欠かさない。
「試合後は大体連絡が入っていますね。毎試合かは分からないですけど、基本的には見てくれているので。応援してくれているなと感じますし、今でもたまに電話したりして近況報告もしています」

自らリクエストして結成した「チームみとま」
三笘にはもうひとつ“家族”のような存在がある。初の海外でのプレーとなったベルギー1部ロイヤル・ユニオン・サン・ジロワーズに加入するタイミングで、自らのリクエストで結成した“チームみとま”だ。栄養士、調理師、トレーナーらからなるプロフェッショナル集団で、自身が最高のコンディションを保つための環境を整えてくれる。
「そのサポートがないと、今ここまで、プレミアでプレーできていないですね。海外移籍するタイミングからサポートしてもらったんですけど、よりサッカーに集中するための環境作りは、その方たちがいないとできないですね。アドバイスだったり、ケアだったり、食事だったり、全てが試合に結びつくのは実感しています。毎日続けることで分かることがたくさんあって、一つ一つの発見が、次の試合に、その何年後かに生きてくる。正しいかは分からないですけど、やり続けることで見えてくることがたくさんあります。毎試合毎試合、自分が試合に出て結果を出すことが彼らの喜びになると思いますし、僕自身もそれでしか返せないと思っています」
3月20日に行われたバーレーン戦では自身も先発し、2-0で勝利。日本代表は、来年6月に北中米で行われるW杯への出場権を手にした。自身が初めて出場した2022年のカタールW杯ではスペインを破る決勝点につながった「三笘の1ミリ」をはじめ、印象的な活躍を見せた。それでも自身の心にあるのは、決勝トーナメント1回戦でPK戦の末に敗れたクロアチア戦の“光景”だ。
「ふとした時に思い出したりしますね。試合後、切り替えるのは難しかったですし、どれだけ成長しても4年また戻ってこないですから。ドイツとスペインに勝ったという面では、色んな人を驚かす大会だったと思いますけど、結果(ベスト16)だけ見れば今までと一緒でしたから」
だが今は違う。前回はメンバーに選ばれるのに必死だったが、今回は日本代表の中心選手としてチームをけん引する役割が求められる。今季はブライトンでも若手選手を鼓舞するなど、リーダーとしての役割も担うようになった。2度目のW杯は、心身共に充実した時期に迎える。
「やっぱりW杯は小さい頃からの夢ですし、何大会でも出たい気持ちは常にありますけど、サッカー選手として多くても3大会だったりというところもあると思うので。そういった面では次の大会は29歳ですし、フィジカル的には整ってくると思います。日本代表としてもより強くなってきている中で、必ず前回大会以上の結果を出したいと思っています」
幼い頃、クリスティアーノ・ロナウドに憧れた少年は、太陽と海が似合う街でプレミアリーガーとなった。世界最高峰の舞台で日々挑み続ける27歳は今、何を思うのかー。
「今まで『どううまくなればいいのか』『どう強くなればいいのか』分からない状態でやっていたところが、分かるようになったという意味では、余裕は出たのかもしれないですね。やるべきことが分かったのはいいことですけど、結局、結果が出ないと悩みは尽きないんです。毎試合ごとに反省して悩んでいるのは、昔から変わらないですね。中学、高校、大学と。先は見据えつつやってきましたけど、やっぱり一つ一つの壁を乗り越えて、ここに来ているのは間違いないので」
ステージがどんなに上がろうが、三笘薫は変わらない。兄を目標にしていたあの頃と。一歩ずつ、一歩ずつ、悩み、もがきながら、自らの道を歩んでいく。
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