国王からメダル…アジアの英雄が「飲食店でアルバイト」 日本で指導者として学ぶ理由

元ネパール代表のバサンタ・ガウチャン氏【写真:FOOTBALL ZONE編集部】
元ネパール代表のバサンタ・ガウチャン氏【写真:FOOTBALL ZONE編集部】

日本サッカーを母国へ、元ネパール代表のバサンタ・ガウチャン氏が奮闘中

 静岡県御殿場市で3月27日から5日間、ジュニア年代の国際大会「コパ・トレーロス2025」が開催された。国内強豪のほか海外クラブも招待され、U-12とU-11の部それぞれ40チームが参加。ネパール代表の背番号10を背負い、現在は日本に在住するバサンタ・ガウチャン氏も、母国の子供たちに熱視線を送った。

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 ネパールから参加したのは、BGアカデミーというクラブ。このBGという文字はまさにバサンタ氏の頭文字から取ったものだ。というのもバサンタ氏はシドニー五輪予選では、国立競技場で日本代表と対戦。その後はA代表でも10番を背負うなど、ネパールのスポーツ好きなら知らない人はいないほどの有名人だ。

「五輪予選で日本と対戦し、すごくいろいろなことを学びました。例えば稲本選手、柳沢選手、中村選手、小野選手とかすごく有名な選手と、同じ時代に一緒にやれたことが一番の思い出です。5、6万人のなかでやるのは初めてで、すごくいい経験になりました。あとはイラン代表のアリ・ダエイもよく覚えています」

 その後は、2009年に現役引退して来日。「ネパールから見ると日本のサッカーはすごく有名。日本はアジアでは1位なので、育成のところがすごく気になって。そこで日本を選んで来ました」。日本のサッカーを学び、ネパールに持ち帰るという使命感に燃えていたが、来日して思わぬ落とし穴が待っていた。

「ちょっと自分が甘かったかもしれないですが、英語でも大丈夫かなと思って日本に来たんです。でも全く英語が通じなかったので、2年間くらいはちょっとつらかったですね。サッカーの仕事をやりたかったんですけど、言葉が全く分からなくて。杉並区のクラブでボランティアとしてサポートしていました」

 ネパールでは国王からメダルを授与されたほどの英雄的な存在。そんなバサンタ氏は当時、プライドを捨てて「普通の飲食店とかでアルバイトをやっていました」というから驚きだ。「サッカーを学びたい。ネパールのサッカーのためにサポートしたいという自分の目的があったので」と熱い思いを吐露する。

「ネパールではサッカーは一番のスポーツ。最近は女子サッカーも人気で、競技人口も多いです。でも、指導者や育成のシステムがまだできてないというところで。それで、どうしても日本でマネジメントとか指導を学びたいと。ネパールに帰ったら、学んだことをあっちでもできたらいいなと思っています」

 現在は、日本語も流ちょうに操ることができるようになり、充実した毎日を送る。平野淳氏が代表を務めるファンルーツで週に5、6回、日本の子供たちを指導。2年前から自身のアカデミーを運営し、今大会での来日にも尽力するなど忙しい。NPO法人の理事長として、ネパールの子供たちへ支援も欠かさない。

 BGアカデミーは今大会、湘南ベルマーレU-12に2-6で敗れたが途中まで互角の好勝負を演じた。FIFAランクは175位だが、今の目標はアジアカップ本大会に出場すること。バサンタ氏は「ネパールのサッカー協会から戻ってきてほしいと言われましたが、自分はもうちょっと学びたい」と今後について語った。

(FOOTBALL ZONE編集部・工藤慶大 / Keita Kudo)

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