レアルでも封殺困難…久保建英は「最大の脅威」 厳しくマークでも苛立たず虎視眈々の進化【コラム】

久保にカマヴィンガをぶつけてきたレアル・マドリードの警戒ぶり
コパ・デル・レイ(国王杯)準決勝第2戦、レアル・マドリード対レアル・ソシエダは激闘の末にレアル・マドリードがファイナルへ進出した。
90分間ではアウェーのレアル・ソシエダが3-4で勝利。第1戦を0-1で落としていたため2戦合計で4-4となり延長戦へ。延長後半10分にCKからアントニオ・リュディガーが決勝点となるヘディングシュートを叩き込み、レアル・マドリードが辛くも決勝進出を果たした。
レアル・マドリードは久保建英にエドゥアルド・カマヴィンガをぶつけていた。カマヴィンガの本来のポジションはMF。DFからFWまでこなすオールラウンドプレーヤーで左サイドバック(SB)での出場もこれが初めてではない。ただ、左SBフェルランド・メンディが負傷していた事情があるとはいえ、控えのSBフラン・ガルシアではなくカマヴィンガを起用してきたのは意外だった。
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前半、カマヴィンガはヴィニシウス・ジュニオールのサポートに徹して攻撃にはあまり加わっていない。久保への警戒を解かず、ほぼ完全に抑え込んだ。
レアル・ソシエダの久保は日本代表と違って、右サイドに張って仕掛けていくプレースタイルである。その突破力、シュート、ラストパスは不可欠な攻め手になっていて、対戦相手にとっては最大の脅威。久保に自由にプレーさせてはいけないと考えるのは当然なのだが、レアル・マドリードがカマヴィンガを当ててくるほど用心しなければならない選手と認識されるようになっているわけだ。
久保はレアル・ソシエダで特別な存在になった。そのぶん相手からは厳しいマークを受けることになる。それでもなお活躍できるかどうかが問われていく。
前半終了間際、初めて前向きに仕掛けるチャンスを得た久保は迷わず得意のカットインでペナルティーエリア内へ入る。ヴィニシウスに背後から掴まれて倒れるが笛は鳴らず。おそらくPKを取りにいったのだと思うが、ちょっと倒れるのが早かったかもしれない。とはいえ、PKでもおかしくない状況に1回のチャンスで持っていった。
後半3ゴールに絡んだ久保、ボールを持てば決定的なプレー
レアル・ソシエダの後半の3ゴールはいずれも久保が絡んでいる。後半27分、パブロ・マリンのクロスからオウンゴール。この直前に久保は突破から際どいクロスボールを入れていて、そのこぼれ球を拾ってからの攻め込みだった。後半35分には久保のプルバックをミケル・オヤルサバルがゲット。急停止で2人のDFを外しての冷静なラストパスだった。
後半アディショナルタイムの得点はFKからオヤルサバルがヘディングでねじ込んだもの。2戦合計4-4、延長へ持ち込む1点となった。このFKはカマヴィンガの久保へのファウルで得ている。寸前にボールを逃がしカマヴィンガのタックルがファウルになり、主審にイエローカードも出させた。
前半はカマヴィンガに監視されてほとんどパスももらえていなかったが、後半はボールを持てば決定的なプレーをしている。90分間、久保を抑え切るのは困難ということだ。厳しくマークされても苛立たず、冷静に、虎視眈々と機会を窺い、好機を逃さなかった。
決勝に出られないのは残念だが、久保がすでに次のステップに足をかけている様子は頼もしかった。

西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。