“ライバル”から毎日電話「今から行く」 JリーグMVPと喧嘩…大病患った親友「ずっと悔しかった」【インタビュー】

お笑いコンビ「ジョックロック」のゆうじろー氏【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】
お笑いコンビ「ジョックロック」のゆうじろー氏【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】

ジョックロック・ゆうじろー氏と岩田智輝は同期で強豪・四日市南SSCへ

 2022年にJリーグMVPとなったMF岩田智輝は、現在イングランド3部バーミンガム・シティで戦っている。同じ年に結成されたお笑いコンビ「ジョックロック」のゆうじろー氏(吉本興業)は、小学校、中学校で同じサッカーチームに所属していた。“ライバル関係”と明かす2人の共通点を、ゆうじろー氏の視点から紐解いていく。(取材・文=金子拳也/全4回の3回目)

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 大分県出身のゆうじろー氏は、兄の影響を受け小学校1年生の頃にサッカーを始める。同県の強豪・四日市南SSCへ岩田と同じ日に入部。先輩にはMF松原健(横浜F・マリノス)の姿もあった。岩田とは家も近所。交流する機会は多かった。クラブではリフティングの記録を競い合う場面があり、ゆうじろー氏と岩田はお互いに意識し合うことになる。

「最初、智輝が1年生で30回くらいいったんです。僕20回とかで悔しかった。小2になったら僕が200回いって抜いて、小3で智輝が一気に1000回くらいいきました。僕も負けてられんと思って小4で4000回くらい。それを繰り返してお互い競い合って、高め合っていましたね」

 学校の同級生でもあった2人は、休み時間になると一目散に校庭に出てサッカーを楽しんだ。チームはゆうじろー氏と、岩田の2人がそれぞれキャプテンとなり「喧嘩になるくらいのバチバチバトル」。一方のプライベートでは「夏休みになると毎日あいつから電話がかかってきて『今から行くわ』と。一緒にカードゲームで遊んだり、終わったあとにはサッカー。そんな毎日でした」と、友人として仲の良いエピソードを明かす。電話はほとんど、岩田のほうからだったという。

 中学でも同じサッカークラブに入部。大分トリニータU-15宇佐で、切磋琢磨し合った。だがそんな時、中学2年生の夏にゆうじろー氏の悪性リンパ腫が判明する。約9か月間の入院で、サッカーから離れることになった。

「(チーム内で)智輝だけが携帯持っていたので、毎日メールをくれました。『体調どう?』みたいなのをちょっと冗談交じりに。『今日学校でこんなことあった』とか、あいつだけ毎日くれる。めっちゃいいやつです」

 お互いにプロサッカー選手を目指し邁進した日々。ゆうじろー氏も「絶対に復帰してやる」という強い思いの下、闘病生活を送った。

バーミンガム・シティで活躍する岩田智輝【写真:Getty Images】
バーミンガム・シティで活躍する岩田智輝【写真:Getty Images】

岩田がシーズンMVPに輝いた22年にコンビ結成、2年後にM-1ファイナリスト

 ゆうじろー氏は、高校生になってからも岩田と定期的に連絡を取っていた。病気を克服し、実際にサッカーに復帰できたのは高校2年生の夏。フル出場できるまで回復する頃には、卒業年の夏になっていた。

 約3年間、思うようにプレーできない日々。必死にもがいてきたなか、大学への進学も決まりようやく“プロの道”を本格的に目指そうとした時、治療の際の薬の副作用で、「膝の骨が壊死」していることが検査で明らかになる。ここにきて、ゆうじろー氏はサッカーの道を諦めるしかなくなってしまった。

「高卒で智輝はプロになって、まだずっと悔しかったです。なんか活躍してるやん。負けたくないなと」

 それでもふとした気付きから、“芸人”という新たなフィールドに足を踏み入れる。2022年、岩田は横浜F・マリノスでリーグ優勝に貢献。32試合に出場し、シーズンMVPに選ばれた。同じ年にゆうじろー氏はお笑いコンビ「ジョックロック」を結成。2年後、M-1グランプリのファイナリストとして大舞台に立つことになる。

移った口癖「まだまだこれから」…結婚の証人はゆうじろー氏だった

 サッカー部で競い合った岩田の口癖は「まだまだこれから」。だがインタビューではゆうじろー氏も同じ言葉を思わず口に出していた。「僕も移っていますね」と照れ臭そうに笑う。

「智輝はずっと凄い。中学も一緒のチームで、僕も絶対負けない気持ちでやっていました。僕が病気になってしまって、智輝はもうそのまま順調にステップアップしてユースまで上がって、プロになる。僕もやはり負けたくない。

 プロ目指していたけど結局諦めることになってしまって、そこからは智輝に託すじゃないけど……今もやってくれています。僕なんか関係なくあいつはやりますけど、昔からメンタルだけが本当に強かったんで。誰にも負けへんやろなとは思っていました」

 負けん気の強い2人の出会い。離れていても、お互いが刺激になる。岩田が入籍した際に証人となったのはゆうじろー氏だった。「今でもお互いの誕生日を祝ったりします。僕がお金なさすぎた頃は食べ物を送ってくれたり……。本当に人情もあるやついいなんです」と親友の良さを嬉しそうに語るゆうじろー氏の顔は、この日一番眩しく輝いていた。

[プロフィール]
ゆうじろー/1998年01月26日生まれ、大分県出身。NSC大阪42期生、吉本興業所属。22年に福本ユウショウとお笑いコンビ『ジョックロック』を結成。23年にNHK新人お笑い大賞を準優勝。翌年も同大会で準優勝、さらにM-1グランプリ2024で初のファイナリストを経験。かつてはプロサッカー選手を目指し、中学時代では大分トリニータのアカデミーに所属。大病を患い治療後に回復したが、身体への影響を考慮して夢を断念した。22年JリーグMVPの岩田智輝(英3部バーミンガム)とは同級生で元チームメイト。関西テレビ放送「水曜はJ!」で初の番組MCを務めている。

(FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也 / Kenya Kaneko)



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