「明日死ぬ可能性もある」プロ断念→M-1決勝へ 親友はJリーグMVP…芸人を志した対抗心【インタビュー】

お笑いコンビ「ジョックロック」のゆうじろー氏【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】
お笑いコンビ「ジョックロック」のゆうじろー氏【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】

ゆうじろー氏は大学でプロサッカーの道を断念…その後、芸人となるまで

 漫才日本一を決める「M-1グランプリ2024」で初のファイナリストとなったお笑いコンビ「ジョックロック」のゆうじろー氏(吉本興業)は、高校生活を最後にプロサッカー選手を諦めざるを得なくなった。その後どうして芸人の道を選んだのか。その影には親友の存在も大きかった。ゆうじろー氏の心境の変化をなぞる。(取材・文=金子拳也/全4回の2回目)

【PR】DAZNを半額で視聴可能な学生向け「ABEMA de DAZN 学割プラン」が新登場!

   ◇   ◇   ◇

 小学生の頃からサッカーにのめり込んだゆうじろー氏。だが大分トリニータU-15宇佐に所属していた中学2年生の冬に、悪性リンパ腫が見つかる。約9か月の入院、継続的な治療を経て高校2年生の夏頃に完治するも、薬の副作用の影響でサッカー選手になる夢を諦めなければならなかった。

 サッカーを続けるために選んだ関西学院大学だったが、ゆうじろー氏はフットサルサークルに入りながら次の夢を模索する。「大学時代は本当にたくさんのことを経験しました。ヒッチハイク、タイ旅行、ボランティア……なかなかやりたいことが見つかりませんでした」と当時の複雑な心境をのぞかせた。

 小学校、中学校で“ライバル的存在”だった岩田智輝は高卒でJリーグ(大分トリニータ)入り。悔しさもあったなか、「智輝にちょっと対抗できるところってそこかもな」と気付いたのが“お笑い芸人”という道だった。

「『俺、お笑い好きやったな』と。当時入っていたフットサルサークルもお笑い好きが多くて、けっこう笑わせ合いみたいなことをしていたんです。『これ楽しいぞ』となって。そういえば小学校の頃とかもサッカーチーム内でいじられたり、友達と爆笑レッドシアターみたいなバラエティーを見て、それを完コピしていたことも思い出したりして」

 ふとしたきっかけで「俺がサッカー選手になりたかったのも、結局うまいとか、ゴール決めたときに目立っているのが好きだったからだなと。じゃあお笑いでも目立てるかも。もしかしたら智輝と共演できるかもしれない」という意欲が沸々とあふれた。

3度コンビを組んだが長続きせず解散「相方さえ決めればいける自信あるのに」

 ゆうじろー氏の大学当時、ちょうどお笑いコンビ「千鳥」が売れ出した頃だった。「こんな風に相方と仲良く楽しそうに仕事をして、お金がもらえるんか。そう思ったらいいことしかないんちゃうとか思って」。思い切った決断ができたのは、病気を経験していたことも大きい。

「明日死ぬ可能性もあるし別にやりたいことやったほうがいいなと」

 大学4年生の時にNSC(NSC吉本総合芸能学院/吉本興業の養成所)に入る。NSCという選択肢が出てから決断までは約1か月、「滅茶苦茶悩んだ」とゆうじろー氏は明かす。それでも、自分で両親に「明日死ぬかもしれんから、やりたいことやらせてほしい」と頼み込んで許諾を得る。「3年か5年以内に何もならなかったらやめて公務員になりなさい」。真面目な父の言葉が心に刺さった。

 単身でNSCへ。3度コンビを組んだが長続きせず解散してしまう。なかなか相方が定まらなかった。「相方さえ決めればいける自信あるのに」と、もどかしい思いを胸に続けていた最中、当時同居人だったお笑いコンビ「ライムギ」のなつみ氏が福本ユウショウ氏とつなげてくれることになる。

「芸人3年目の頃、福本さんの親友のお笑いコンビ『ナナ』の大二さんと、僕の同居人だったなつみが知り合って、4人でご飯に行ったのが最初です。熱量、考え方、もちろんネタも面白い。『なんでこの人埋もれてたんや』と率直に感じました」

2024年のM-1で9位「まさかこんなに早くファイナリストになれるとは」

 2022年に「ジョックロック」を結成。福本氏とゆうじろー氏は“10歳差”だが、「波長が合う」と本人が語るように独特の雰囲気が漂うコンビになる。翌2023年から2年連続でNHK新人お笑い大賞の準優勝に輝くと、昨年のM-1グランプリで見事ファイナリストに。「まさかこんなに早くファイナリストになれるとは思っていなかったです」とゆうじろー氏も思い起こすが、「この道は間違ってなかった」と安堵した瞬間でもあった。「その頃智輝はJリーグMVPになっていて、少しは並びに出たような……あいつに食らいつけるかもと嬉しかったです」と笑顔を見せる。

 M-1の結果は9位。次回以降のリベンジに燃える。「今売れている先輩たちに面白いと思われたい、すげえと思わせたいです。あの人らの輪に入っていきたいですね」と反骨精神を見せるゆうじろー氏。憧れはやはり千鳥の2人だ。「めっちゃ好きですね。楽しそうやし、ずっと自然にやっている。あんな感じになりたいです」。独特の雰囲気を醸し出すジョックロックの快進撃は、まだ始まったばかりだ。

[プロフィール]
ゆうじろー/1998年01月26日生まれ、大分県出身。NSC大阪42期生、吉本興業所属。22年に福本ユウショウとお笑いコンビ『ジョックロック』を結成。23年にNHK新人お笑い大賞を準優勝。翌年も同大会で準優勝、さらにM-1グランプリ2024で初のファイナリストを経験。かつてはプロサッカー選手を目指し、中学時代では大分トリニータのアカデミーに所属。大病を患い治療後に回復したが、身体への影響を考慮して夢を断念した。22年JリーグMVPの岩田智輝(英3部バーミンガム)とは同級生で元チームメイト。関西テレビ放送「水曜はJ!」で初の番組MCを務めている。

(FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也 / Kenya Kaneko)

page 1/1

今、あなたにオススメ

トレンド