184cm万能型CB、スペイン人の指導で「考え方が大きく変わった」 1から見直した”肉体改造”

作陽学園の14年ぶり優勝、その中心に主将CB藤田結大の存在あり
伝統の緑のユニフォームが結果を残した。第17回中国高等学校サッカー新人大会において作陽学園(岡山)が14年ぶりの優勝を成し遂げた。
作陽学園と言えば、作陽高校として覚えている人が多いだろう。第85回全国高校サッカー選手権で準優勝を成し遂げ、これまで青山敏弘(昨季現役引退)、伊藤涼太郎(シント=トロイデン)、河面旺成(名古屋グランパス)など多くのJリーガーを輩出している。学校は中国山地の中央部に位置する岡山県津山市にあったが、2023年度から倉敷市に校舎移転。その際に名前は作陽学園となった。
ユニフォームは変わらず緑のまま。近年、岡山学芸館がメキメキと力を付けており、2年前の第101回全国高校サッカー選手権大会で県勢初優勝を成し遂げるなど、ライバルの後塵を拝すことも多かった。しかし、今年は個性的な選手が揃い、就任9年目を迎える36歳の青年監督である酒井貴政監督と、校長も務める野村雅之総監がしっかりと戦術的なエッセンスを植えつけて力のあるチームに仕立ててきている。
その中心にいるのがキャプテンでセンターバック(CB)を務める藤田結大だ。184センチのサイズと屈強なフィジカルを誇り、空中戦と対人の強さはもちろんのこと、両足で正確なキックとドリブルで前に運びながらの展開もできる万能型CBである。
奈良県出身の彼は中学時代、バルサアカデミー奈良に所属。「スペイン人のコーチが直接教えてくれるので、サッカーに対する考え方が大きく変わった」と口にするように、個人戦術からチーム戦術までインテリジェンスの部分で大きく磨かれた。
「1つ1つのパスにも名前があったり、サッカーに対するアプローチが独特だったり、本当に『サッカーの深み』を学びました。例えばスペインではつなぐ意識と質が違う。1人で突破するのではなく、複数で突破をしていく。相手に近寄っていくだけで突破ができるなど、いろいろな視点を学びました」
選手権予選の敗戦から“肉体改造”にも着手
ボランチとして成長をした彼は、作陽ではDFにコンバート。昨年は右サイドバック(SB)としてアップダウン能力とクロスの精度を磨いた。そして今年はCBとして守備の要となった。
「一番後ろなので、なるべく遠くを見ることを意識しています。これはバルサアカデミーでも言われていたのですが、どうしても後ろでつないでいたら横や後ろを見がちなのですが、ジェラール・ピケ選手は最初にFWの動きを常に見ていたと。動き出したスペースに1本のロングフィードを正確に通すことが出来れば、それでビルドアップは完結する。1発でひっくり返せるところを常に狙った上で、ダメだったらほかの選択をすることを忘れないようにしています。
あと、ボランチと異なるのは、CBだと自分が一歩下がるだけで相手のFWが僕に食いついてくる。それで出来た相手FWの背後のスペースに一気にボールを受けてから運んだり、遠くに出すと見せかけてボランチやトップ下などの2列目に出したりと、CBは駆け引きの幅を一気に広げることができるポジションだと思っています」
これまで培ってきた技術とインテリジェンスに加え、昨年の選手権予選決勝で岡山学芸館に0-1で敗れた際に、「何もできなかった」と力不足を痛感したことで、肉体改造にも着手した。食事を1から見直し、筋トレも身体操作を考えながら自分に課した。
「中国ナンバーワンCBになりたい」と意気込んで臨んだ中国新人大会では、前述で触れた通り、14年ぶりの優勝に貢献をした。
「岡山学芸館に染まりつつある岡山県を今年はすべて緑色に塗り替えるつもりでいます。それだけじゃなくて、全国で作陽学園の緻密で組織的なサッカーを見せつけたいです」
まだこれは狼煙に過ぎない。頭脳的かつ屈強なCBが全国でその存在感を放っていく物語が今、幕を開けた。
(FOOTBALL ZONE編集部)