強豪サッカー部まさかの苦杯「信じられない」 全国屈指の実力校が…自責の念に駆られ「情けない」

選手権&新人戦予選で敗退…立正大淞南高FW若槻大雲が抱く覚悟
中国地区に面白いストライカーがいる。立正大淞南高校(島根)の若槻大雲は183cmのサイズと抜群のスプリント力を有するFWだ。ストライドの大きいランニングと身体を入れながら加速できる能力はなかなか真似できないもの。加えて、常にゴールを狙う獰猛(どうもう)さも魅力である。
立正大淞南のサッカーはボールを握りながらも、隙あらば縦にボールを差し込む攻撃的なスタイルを標榜する。最前線に君臨する若槻の役割はその縦へのパスに対していかにアジャストをして動き出したり、先に動き出してパスを引き出したりすることにある。
「FWが勢い持ってやらないとチームも勢いづかない、いつも怖いプレーしろと言われているなかで、無難なプレーをしてしまっていては相手は怖くないし、チームにとってもプラスにならない。最終ラインや中盤が前を向くと思ったらすぐ駆け引きをして狙っています」
2年生の時からチームの最前線を託されているが、彼にとっても、チームにとっても昨年の1年間は苦難の連続だった。インターハイでは初戦で帝京大可児に1-6と屈辱の大敗。プリンスリーグ中国では3位に終わり、プレミアリーグ参入戦にあと1つ届かなかった。さらに選手権予選では準決勝で益田東に1-1からのまさかのPK戦敗退。選手権の舞台に立つことはできなかった。
「選手権予選準決勝は後半から出たのですが、相手のブロックを打ち破れなかった。もっとガツガツと何がなんでもこじ開けるという気持ち、気迫が足りなかった。負けた瞬間は涙が出たのですが、それは悔しい、悲しいというより、信じられないという思いが強かった」
島根県出身の若槻にとって、立正大淞南はサッカーを始めた3歳の頃からずっと憧れの存在だった。黄色のユニフォームを着て、全国大会で攻撃的なサッカーを仕掛ける姿に、「いつか自分もああなりたい」とずっと思っていた。
サンフレッチェくにびきFCジュニアユースから迷わず立正大淞南に進学し、憧れの黄色いユニフォームを着て攻撃サッカーのフィニッシャーとしての大役を任されるまでになった。
しかし、夢の舞台には立てなかった。さらに新チームが立ち上がって迎えた新人戦島根県予選でも準決勝で明誠に0-1の敗戦。中国新人大会は島根県3位として出場することになった。
「淞南が県内で負けるということは絶対にあってはならないことだと思っていますし、その中で2回も立て続けに負けてしまったことは悔しいというか情けなかった」
忸怩たる思いで臨んだ中国新人サッカー大会。若槻は躍動するアタッキングサッカーの中枢にいた。ボランチの司令塔・豊田寛太、2トップを組む久保侑聖とともに鋭い動き出しとゴール前でのシュートとパスの選択の質の高さを見せてチームに勢いをもたらすと、1回戦では広島新庄に4-0の快勝を収めた。準々決勝で広島の就実を1-0で下すと、準決勝では明誠を3-0で圧倒し、若槻も1ゴールを挙げた。決勝では作陽学園に0-1で敗れたが、準優勝という結果はチームにとって非常にポジティブなものだった。
「スピードを生かした裏抜けだけではなく、ポストプレーなどで前の起点を作る。どっちもやれと言われているし、それが出来るのが自分の良さです。でもそれも今のままでは昨年と同じことを繰り返してしまう。憧れのユニフォームを着て全国で活躍したい。そう心から願っているし、その思いは覚悟に変わっているからこそ、今年はもっと成長したいんです」
注目の大型高速ストライカーは幼い頃から抱き続ける変わらない想いを胸に、夢を叶えるための勝負のラストイヤーに懸けている。
(FOOTBALL ZONE編集部)