予選中に届いた訃報…天国に行っても「きっと側にいる」 名門キャプテンが抱く「父とともに」

キャプテンとしてチームの先頭に立つ竹ノ谷優駕スベディ【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】
キャプテンとしてチームの先頭に立つ竹ノ谷優駕スベディ【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】

選手権優勝校・前橋育英の新たな主役候補たち【3】竹ノ谷優駕スベディ

 第103回全国高校サッカー選手権大会を制した前橋育英。周囲は祝福ムードに包まれているが、すでに次なる1年へ新チームは立ち上がっている。主軸候補は5人。そのうちの1人が新キャプテンを担う竹ノ谷優駕スベディだ。ここでは、彼が胸に秘める思いに耳を傾けながら「優勝のその後」をテーマに物語を紡いでいく。

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 左サイドバック(SB)とボランチの二刀流で活躍をした竹ノ谷は、選手権予選中に尊敬する父を交通事故で亡くすというショッキングな事実を突きつけられた。「お父さんはきっとずっと僕らの側にいてくれる。だからこそ、お父さんが大好きで、教えてくれたサッカーで手を抜いたりすることは絶対にやりたくない」。チームのために、サッカー選手として成長するために、彼はサッカーに打ち込み続けた。

 選手権では当然のようにその話題がフォーカスされたが、彼は常に気丈に立ち振る舞い、モチベーションに変えて前橋育英の勝利のために全力を尽くした。

「父の思いを背負って戦ったので、本当に嫌ではありませんでした。父とともに戦うことは大会前も、大会中も、大会後も変わらない僕の信念のようなものなので、一切変わりませんでした」

 左SBとしては高いスプリント能力と正確なクロス、そしてサイドでの対人の強さとインターセプトのうまさを発揮して攻守において起点となった。ボランチではスペースを埋める危機察知能力の高さとパスの正確性を駆使して、攻守の要となった。試合中にポジションが変わっても、彼は山田耕介監督から求められていること、やらなければならないことを頭の中で整理して、流れを切らさない、流れを引き戻すプレーをするなど、インテリジェンスの面でも高いクオリティーを示し続けた。

 そして新チームが立ち上がるとキャプテンとチームの象徴的な番号である14番を石井陽(明治大進学)から引き継ぐことになった。

「より自覚と覚悟を持たないといけない。伝統ある番号とキャプテンマークなので、重みを感じながら自分の良さを出していきたい。歴代で1番いいキャプテン、いいチームにできるように頑張りたい。今それで頭がいっぱいなので、優勝の余韻に浸っている暇はありません」

 注目度は高いままだが彼は昨年、石井がチームを引っ張るのに悩み続けていた姿を知っている。前橋育英に入ったきっかけの1つで、憧れの存在である徳永涼(筑波大)からも14番、そして、キャプテンの両方を背負う辛さを聞いていた。

「この立場は『自分が、自分が』になってはいけない。こっちが主張するだけではなく、相手の話もしっかりと聞かないといけない。僕も試合に勝ちたいので、どうしても言葉が厳しくなってしまうのですが、それだけでは周りがついてこないのは涼さん、陽さんから学んでいるので、聞く耳を持って、時には厳しく、時にはサポートしながらチームを引っ張っていきたいと思います」

 プーマカップ群馬では毅然とした態度でチームの中心に君臨する竹ノ谷がいた。「今年は守備面では自分が全部奪い取るんだという気持ちでやっている」と口にしたように、ボランチとして豊富な運動量でスペースを埋めたり、球際に顔を出したり、献身的かつ獰猛なプレーを見せた。攻撃面でもコンビを組む柴野快仁とアイコンタクトでお互いのポジションを確認しながら、質の高いチャレンジ&カバーを見せた。高校ナンバーワンボランチコンビとの呼び声も納得できる連係と技術レベルの高さだった。

 U-17日本高校選抜も経験し、いよいよ来月は高円宮杯プレミアリーグEASTが開幕する。心身ともに逞しくなった竹ノ谷は、より精悍な顔つきで前回王者を力強く、かつ柔軟に引っ張っていく。

(FOOTBALL ZONE編集部)

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