高校生の快挙に…3万人大観衆の衝撃 地元で思わず感動、県民動かす歓喜を「もう一度」

今年の選手権にも出場した柴野快仁【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】
今年の選手権にも出場した柴野快仁【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】

選手権優勝校・前橋育英の新たな主役候補たち【1】柴野快仁

 第103回全国高校サッカー選手権大会を制した前橋育英。周囲は祝福ムードに包まれているが、すでに次なる1年へ新チームは立ち上がっている。主軸候補は5人。そのうちの1人がボランチを担うMF柴野快仁だ。ここでは、彼が胸に秘める思いに耳を傾けながら「優勝のその後」をテーマに物語を紡いでいく。

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 今冬の高校サッカー選手権でキャプテンの石井陽(明治大学進学)とダブルボランチを組んだ柴野は、ずば抜けたパスセンスと中盤の底から運ぶドリブルも突破のドリブルもできる攻撃的なボランチとして、今年もチームに欠かせない軸となる。

 今年3月のプーマカップ群馬では左右両足、インサイド、インフロント、アウトサイドを巧みに使い分けて攻撃のリズムを作り出す質の高いパスを繰り出し、コンビを組む竹ノ谷優駕スベディとも息のあったチャレンジ&カバーを見せた。

 印象的だったのは帝京高校との最終戦でボールに意図的に回転をかけて、相手が取れるようで取れない、かつ味方が次のプレーを考えやすい優しいパスを供給していたこと。後半に見せた、右サイドバック瀧口眞大のオーバーラップにピタリと合わせた右足のアウトフロントパスは絶品だった。強烈な内回転をボールに加え、パスカットを狙った相手の足先を避けながら、スピードに乗った瀧口の足元にピタリと届けた。

「相手DFがちょっと僕と並走気味だったので、そこでインのスペースにボールを出すと、先に相手にコースに入られて、身体を入れられてしまうと思った。アウトにかけて外側に逃げるように出せば、相手も触れないし、オーバーラップしてきた瀧口もスピードを落とさないで足もとで受けられると思ってアウトにしました」

 本人も納得のプレーだった。

「僕は観ている人が楽しんでくれるようなプレーをしたいので、最善の選択を一番かっこいい方法でやりたいなと思っています。でも、ただ小手先でカッコつけるのではなくて、試合開始10分から15分の間に相手のスピードや強度、意図やサッカーのやり方などを見極めて、そのうえで選択肢をたくさん持つ。常に準備を意識しながら、判断と思考は研ぎ澄ませるようにしています」

 冷静な戦術的思考と基礎技術と遊び心。昨年の1年間はそれを自分の土台として積み上げた時間だった。

「昨年の1年間を通じてチームに貢献できたのかと言うと、そうではなかった。特に最初のほうはプレミアリーグに出たり、その下のプリンスリーグ関東に出たりと調子の波が激しかった。プリンスでは伸び伸びできるのに、プレミアでは強度に圧倒されてしまって、とにかく周りに迷惑をかけないようにというメンタリティーになってしまいました。途中で『これじゃ絶対に自分が主役になることはない』と感じたので、普段の練習から1つのトラップやドリブルにこだわるようになって、奪われたらすごく悔しがるようになりました。こうした意識変化が徐々に自分のプレーだけではなく、精神的な土台になっていきました」

 さらに選手権優勝という歓喜も彼の価値観に大きな影響を与えた。

「選手権を優勝することは、ここまで反響が大きいんだと素直に思いました。国立競技場が満員になって、前橋での優勝パレードには3万人の人が祝福に駆けつけてくれた。あれだけ群馬県民の人たちが喜んでくれるのが嬉しかったし、高校サッカーの素晴らしさを感じました。だからこそ、もう一度味わいたいし、そのためにはこの優勝で満足したり、慢心してしまったりしたら厳しい現実を突きつけられると思う。甘い考えは一切捨てないといけないし、それが少しでも残っていたら必ず足をすくわれる。個人的には育英に最初に来たときのことを忘れずにやることを今年のモットーにしています」

 前橋育英のサッカーに憧れて、厳しい競争も覚悟のうえで今に至る。チームの花形であるボランチでレギュラーを掴んで、成長を続けて将来の道を切り開いていく。選手権優勝はその通過点に過ぎないからこそ、17歳の柴野は初志貫徹の意思を持って自分を磨く手を止めることはない。

(FOOTBALL ZONE編集部)

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