PK失敗の18歳へ寄り添う“先輩” 「前を向いて」 任された大役…ACL敗退の舞台裏

浦和Lの18歳MF藤崎がPKの場面を振り返る
三菱重工浦和レッズレディースは3月23日にAFC女子チャンピオンズリーグ(AWCL)準々決勝で武漢江大FC(中国)と対戦し、PK戦にもつれ込んだゲームで敗戦した。3人目で枠外への失敗をしてしまった18歳MF藤崎智子は悔しさを見せつつも、温かく迎えた先輩選手たちについて「素敵な仲間に囲まれてサッカーができることに感謝したい」と振り返っている。
【注目】白熱するJリーグ、一部の試合を無料ライブ配信! 簡単登録ですぐ視聴できる「DAZN Freemium」はここから
試合序盤に浦和はカウンターからケニア人FWテリー・エンゲシャに突破され際どいシュートを許したが、GK池田咲紀子がファインセーブ。その後は、浦和が完全に押し込んで武漢のブロックを崩しにかかる展開になった。しかし、FW高橋はなを最前線に置いた攻撃はゴール前に良い形で入り込む回数を増やせなかった。
後半も浦和がほぼハーフコートゲームの状態で押し込むも手を焼く時間が続いたがゴールが遠い。その中で後半28分に藤﨑が投入された。左サイドハーフに入って、それまでにチームに少なかったドリブルでの仕掛けでアクセントになると、延長後半には際どいミドルを放ったがわずかに枠外へ。それでも、この試合の浦和の攻撃の中では惜しい場面だった。
そして、PK戦では楠瀬直木監督が「僕が指名しているので、順番などは僕に責任がある。『はい!』といい返事をして蹴ってくれた選手たちには感謝している」と舞台裏を明かした中、藤﨑は3人目のキッカーに登場。しかし「相手のGKの背が高かったので、下だと引っ掛かってしまうかもと思った」という判断で左上を狙ったシュートはクロスバーを越えた。すぐに涙があふれてしまった藤﨑のことを2人目に成功していたMF塩越柚歩が迎え、その後のPK戦の間も寄り添っている姿があった。
塩越は「一番は、PK戦になる前に終わらせなければいけなかった。自分も含め前線の選手として責任がある」という思いを前提にして、藤﨑について「自分自身もPKを外して負けてしまう経験をしているし、この舞台でPKを任せてもらえる、信頼を置いてもらったことは自信を持ってほしい。高校卒業してすぐで、蹴るのにも自信が必要だったと思う。そこで思い切ってやりますと言った智子も偉いと思う。PKになってしまった責任を自分でも感じていたので、蹴ってくれてありがとうという気持ちだった。その決意がこれからにつながると思う」と話した。
PKキッカーを務めたことについて藤﨑は「監督が指名してくれたのは正直嬉しくて、練習でもずっと決めていたので、決められなかったことは本当に申し訳ないです」と話す。それでも、塩越ら先輩選手の行動について「蹴る時にも背中を押してくれて、外してしまった時にも大丈夫、前を向いてと言ってくれた。本当に素敵な仲間に囲まれてサッカーができることに感謝したい」と話した。
高校3年生ながら、今季に向けユースに所属しながらトップの試合に出場できる二種登録をされ、開幕戦の日テレ東京ヴェルディベレーザ戦にスタメン出場と抜擢を受け、リーグ初ゴールまで決める鮮烈なデビューを飾った。そして、この日はあまりにも悔しい経験をした。それらを経て「責任感や向上心が、人一倍高まったと思う」と、成長につながっている実感を話す。
悔しい敗戦になった浦和だが、今週末にはINAC神戸レオネッサとリーグ優勝争いの直接対決が待つ。昨季のリーグ制覇が今大会の出場につながっているだけに、塩越は「今日、負けてしまって、より(リーグを)取らなきゃいけない気持ちになったと思う」と、リベンジの舞台への切符をつかみ取るという意味も込めてリーグ戦へと気持ちを切り替えていた。