ピッチに響いた怒号「終われ!!」 アジアを無双した理由…最終予選で顕著だった「マネジメント術」【連載】

カタールW杯最終予選では“失敗”…敗戦から学んだコンディション管理
森保一監督率いる日本代表は3月20日の北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選でバーレーンに2-0で勝利し、8大会連続8度目の本大会切符をつかみ取った。3試合を残して史上最速でW杯出場を決めた今回の最終予選。強さの秘訣に迫る連載「森保ジャパンの深層」の第2回では森保一監督が前回の反省を生かした「マネジメント術」にスポットを当てる。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)
【PR】DAZNを半額で視聴可能な学生向け「ABEMA de DAZN 学割プラン」が新登場!
◇ ◇ ◇
姿が……ない。2024年10月14日、最終予選オーストラリア戦の前日練習。森保ジャパンの絶対的な大黒柱MF遠藤航が練習場に現れなかった。前日の会見はMF守田英正が出席。遠藤は体調不良だった。
オーストラリア戦は10月シリーズの2戦目。激闘の敵地サウジアラビア戦(2-0)から帰国し、前日13日までは練習に参加していた。だが、コンディションを表すわずかな“数値”の変化をスタッフ陣が感じとり“ドクターストップ”。結果、遠藤は感染症だった。徹底したコンディション管理で、症状が重くなる前に察知でき、最終予選、全試合に出場していた遠藤を休ませて守田英正と田中碧のコンビでオーストラリア戦に臨むこととなった。
今回の最終予選、6勝1分けとアジアを無双できた要因の1つとして、森保監督が前回大会の反省を生かしたから、というのがある。前回はいきなりホームのオマーン戦で敗れ、敵地の中国戦に勝利したものの、アウェー・サウジアラビア戦でも0-1の敗戦を喫した。何よりスタートダッシュに失敗したことが苦しい最終予選になった原因だった。
その初戦のオマーン戦では、選手のコンディションは良くなかった。だが初戦に懸ける選手たちの強い思いを汲み取り、ベストメンバーを起用。結果、足が止まった終了間際の後半43分に決勝点を許した。
やはり選手にはそれぞれ日本代表への気持ちがある。コントロールするのはスタッフ陣の仕事でもある。昨年9月、敵地バーレーンでの練習日。非公開を終えてピッチを覗くと何人かが個人練習を積んでいた。まだ最終予選は始まったばかりのころ。気温35度以上、湿度70%。過酷な環境でも選手は感覚を確かめていた。
その時、ピッチへ飛んできた松本良一フィジカルコーチの怒号が響いた。「終われ!!」「終われ!!!!」。これも細かく選手の状態を管理しているから。厳しい言葉であっても止める必要があった。
国際Aマッチウィークは強行日程。練習2日目に合流すれば、初戦に向けてトレーニング期間は1日だけ、ということも少なくない。今回は森保監督の願いを聞いて、日本サッカー協会がチャーター機も手配した。指揮官のマネジメント術、さらに宮本恒靖会長らの多大なる協力を得て、“独走”で突破出来た最終予選だった。
(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)