森保監督から「帰るか?」 久保建英を変えた“カミナリ”…涙に誓った「チームのため」

最終予選での大きな変化を経て、久保建英は森保ジャパンに欠かせない存在となった【写真:徳原隆元】
最終予選での大きな変化を経て、久保建英は森保ジャパンに欠かせない存在となった【写真:徳原隆元】

久保が1ゴール1アシストでW杯切符を手繰り寄せた

 涙が変えた。日本代表MF久保建英が3月20日、北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選バーレーン戦で1ゴール1アシストと圧倒的なプレーを見せつけ、プレイヤー・オブ・ザ・マッチに輝いた。8大会連続の本大会出場権を得て、世界最速、史上最速で切符を獲得。今シリーズ、久保は何度も「チームのため」を繰り返し発した。その言葉に嘘偽りはない。なぜなら、涙に誓ったからだ――。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)

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   ◇   ◇   ◇   

 日の丸にシュートを乗せた。1-0の後半42分、久保がネットを揺らした。ショートコーナーから受け、個人技で突破して角度のない位置からGKのニアサイドから打ちぬいた。ゴール右に刺さったシュートを見届け「感情が爆発した」とユニフォームを脱いだ。後半21分にはDF伊藤洋輝、FW上田綺世と日本らしくつないで久保へ。走りこんだMF鎌田大地へ絶妙なラストパスを出し、先制点を生み出すアシストをマークした。

「何よりもみんなを安心させたい思いでプレーしていたので、前半は負けても良い試合のはずなのに負けちゃいけないみたいなところがプレーしている身からするとあって、ロングボールの精度とか、気持ちは入っていたけど、空回りではないけど硬さが見えていた。僕自身は動きが良かったので何とか結果を出してチームを落ち着かせたい、楽にしたいと思っていたので、アシストのところはゴールよりうれしかったかもしれない」

 何度も繰り返した「みんなのため」「チームのため」。そしてふと漏らしたのが「自分の実力は分かっている。幼稚さ、幼さは抜けていい選手になったと思う」ということ。久保にとって自身を変えるきっかけとなる本当に大きな出来事があったからだった。

 昨年10月、暑さが残る敵地サウジアラビア。最終予選、最大の“難関”とも言える一戦。2日目から合流した久保の表情は浮かなかった。覇気がなく、いつもならピッチ外まで伝わってくる明るく、元気な声も届かなかった。そのサウジアラビア戦(2-0)では終了間際に“クローザー”として数分間出場するも、見せ場はなかった。試合後の取材エリア、声をかけると「今日はすみません」と話さずにバスへ乗り込んだ。

バーレーン戦の2点目を決めたあとには森保監督と喜びを分かち合った【写真:Getty Images】
バーレーン戦の2点目を決めたあとには森保監督と喜びを分かち合った【写真:Getty Images】

サウジアラビアに響いた指揮官の声

 その姿に疑問を抱いたのは森保監督だった。試合後、指揮官に直接「日本のために戦えるか?」「戦えないなら帰るか?」。そう言われた。

 久保の良さは悔しさを表現できること。とてつもない大きな力に変えられることだ。試合に出られなければ感情を表に出すこともある。だが、その反骨心で日本を救ったことだってあった。

 それでも、今の森保ジャパンは全員同じ方向を向いている。指揮官の言葉は久保に刺さった。そして、溢れだす涙を止められなかった。鼓舞しに来てくれた長友佑都には「お前は日本代表に必要だ。ラ・リーガでプレーしているんだろ?」と伝えられた。心を新たにした瞬間。チームのため、仲間のため、日本のため……。自分だけのためではない、日本代表として日の丸を背負う意味を改めて考えさせられた。

 フル出場したバーレーン戦。攻守に走り回り、1ゴール1アシスト。運動量を落とさずにフォア・ザ・チームに徹した。W杯切符をもたらしたのは間違いなく久保だ。幼稚な姿なんてない。国を背負い、戦い続けたから結果がついてきた。あの日、涙に誓ったから――。久保建英は“強さ”を手に入れたのだ。

(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)



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