W杯出場への大一番…2シャドー最適解考察 決定力発揮でメリット…“可能性大”のコンビとは?【コラム】

バーレーン戦へ先発推奨の2シャドーは?【写真:ロイター】
バーレーン戦へ先発推奨の2シャドーは?【写真:ロイター】

バーレーン戦の先発は大枠固まっている

 2026年北中米ワールドカップ(W杯)出場に王手をかけている日本代表は、3月20日のアジア最終予選第7戦のバーレーン戦(埼玉)に勝てば、日本史上最速の本大会切符獲得が決まる。その大一番に向け、日本代表は17日から千葉県内で調整を開始した。

【PR】DAZNを半額で視聴可能な学生向け「ABEMA de DAZN 学割プラン」が新登場!

 18日には帰国が遅れていたキャプテン遠藤航(リバプール)や久保建英(レアル・ソシエダ)らも合流し、追加招集された町野修斗(キール)も久しぶりに顔を見せた。トレーニングは長友佑都(FC東京)と前田大然(セルティック)を除く25人で冒頭以外を非公開にして、集中できる環境で行われた。

「勝つためのベストな編成を考えた。目の前の勝利にどれだけの力を発揮できるか。W杯出場権を取ることが最優先だ」と森保一監督が13日のメンバー発表会見で強調したとおり、今回は“ガチメンバー”で挑むことが確実視されている。

 守備陣は谷口彰悟(シントトロイデン)と町田浩樹(ユニオン・サン=ジロワーズ)が負傷欠場しているものの、昨年6月まで主力だった伊藤洋輝(バイエルン・ミュンヘン)が復帰。11月の中国戦(厦門)に先発した板倉滉(ボルシアMG)と瀬古歩夢(グラスホッパー)もいるため、3バックはその3枚で行くことになるだろう。守護神・鈴木彩艶(パルマ)ももちろん不動だ。

 中盤は遠藤と守田英正(スポルティング)が濃厚。怪我明けの守田はコンディション的に多少なりとも不安はあるものの、最終予選3ゴールで遠藤以上に大きな存在感を発揮しているだけに、やはり絶対に外せない。両サイドは堂安律(フライブルク)と三笘薫(ブライトン)で決まりだろう。

 前線もFWの上田綺世(フェイエノールト)が不動と目されるが、判断が難しいのはシャドー。これまで森保監督は6試合で10パターン以上の組み合わせにトライしていて、このポジションだけは選択肢が豊富。ゆえに、スタメンを予想しづらいのだ。

シャドーの先発パターンは2つのみ…鎌田はコンディション的に万全

 しかしながら、過去6戦で先発しているのは「南野拓実(ASモナコ)・鎌田大地(クリスタルパレス)」と「南野・久保」の2パターンだけ。試合2日前に合流した久保に比べると、先週末の試合がなかった鎌田はコンディション的に万全だ。そう考えると、やはり今回は前者のコンビで行く可能性が大だ。

 南野と鎌田が組んだ時のメリットを考えると、鎌田はボランチとシャドーの中間ポジションに立ちながらゲームを動かしたり、的確な配球を見せ、試合を巧みにコントロールできる。自身が下がって守田を前に上げ、得点を取らせるプレーも得意。左の三笘も絡んで、最終的に鎌田が点を取るといった形を作っていくことも可能だ。

 鎌田が下がり目の位置でサポートしてくれる分、南野は「上田の背後にいるセカンドトップ」としての役割に注力できる。ゴールへの迫力や決定力という持ち前のストロングを発揮しやすい環境と言えるだろう。現代表最多の24ゴールを記録し、モナコでの直近6試合で4ゴールと気を吐いている背番号8は今、フィニッシャーとしての力を発揮できる貴重な存在。その能力を前面に押し出すことで、日本は確実にバーレーン戦をモノにできるはずだ。

 もう1つ、2人が組むメリットがあるとすれば、両者ともに「チームのために」という献身性を強く押し出しながら、代表でプレーしていることだ。

「シャドーの選手はみんなタイプが違うと思いますけど、僕は攻撃も守備も両方含めて貢献することを求められている」と南野は強調。鎌田も「前回のW杯からよく言ってますけど、代表に対する気持ちが変わってきている。年齢的にも上のほうになってきて、チームのことを考えたりしないといけない年齢でもあるんで、しっかり代表のためにやらないといけない」と神妙な面持ちで語っていた。

堂安と三笘との連動がバーレーン戦攻略のもう1つの鍵になるかも

 特に鎌田がそういった犠牲心を前面に押し出せるようになったのは特筆すべき点だ。そのあたりは、23歳とまだ若い久保との違いかもしれない。30歳前後になったシャドーコンビが「自分たちが日本を勝たせるんだ」と時に黒子となってチームを支えてくれるのは、森保監督のとっても理想的な姿にほかならない。やはりバーレーン戦という大一番を託すのはこのコンビがベストではないか。

 日本戦に向けて長期合宿を組み、1週間前に来日しているバーレーンも、日本攻撃陣のカギを握る2人の連係を寸断すべく、何らかの策を講じてくるだろう。その場合は、ウイングバック(WB)の堂安と三笘が中に入って、シャドーの2人が外に流れるといった流動的なポジショニングを取りつつ、敵を揺さぶっていくのも一案だろう。

 実際、これまでの最終予選で三笘と堂安がシャドーに入ったケースも何度かある。三笘は最近のブライトンでは中央を強く意識した局面打開とゴールで新境地を開拓している。そういったメリットを踏まえながら、南野があえて外に回って、三笘の中への動きを引き出せば、バーレーン守備陣は守りづらくなる。そういった連動性を高めながら臨機応変なサッカーができれば、相手につけ入るスキを与えない圧倒的強さを示せるはず。南野と鎌田の2人が中心となって、分厚く多彩な攻撃陣をリードしていくべきだ。

「パレスのサッカーと代表のサッカーは本当に全然違ったもの。基本的に代表は今ボールを保持できて、すごい攻撃的にやれてるんで、個人的にはやっててすごく楽しい。特にウインガーが仕掛けられる選手が多いんで、僕みたいなタイプは恩恵も受けている。代表の方が自分の良さを出しやすいんじゃないかと思います」と鎌田も前向きにコメントしていたが、所属クラブでのフラストレーションを払拭するためにも、今回のバーレーン戦をまず大事にしてほしい。

 絶好調の南野から刺激を受けて、2人が揃って得点源になってくれればベスト。次戦では主軸シャドーの揃い踏みで北中米W杯への道を切り開く…。そんな日本代表をぜひとも見てみたいものである。

(元川悦子 / Etsuko Motokawa)



page 1/1

元川悦子

もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング