ロンドンオリンピック日本代表の背番号10 東慶悟が見せ始めた明らかな変化と可能性

城福が目を丸くした過去の東のプレースタイル

 約10年前、北九州市立若松中には王様と呼ばれる選手がいた。そのうわさを聞き付けた当時U―15日本代表を率いた城福浩(現・甲府監督)は北九州市の中体連の大会へと足を運んだ。お目当ての選手がボールを持つと、そのプレーに「面白い」とうなった。

 だが、次の瞬間、城福は目を丸くした。ボールが足元を離れた瞬間、その選手はプレーが続いている中で歩き始めたのだ。それが、東慶悟だった。

 城福は当時を思い出し、こう語った。

「確かに、ボールを持てば、面白い選手だった。一度、代表に招集したんだけど、パスを出した後に歩くような選手はほかにいない。だから別の意味でメチャクチャ目立っていた。当時は、もし、もっと高いレベルのチームで練習する時間があればなと思っていた」

 城福にはノンストップで進行する試合の中で、彼の周りだけが時間が止まって見えた。東は、その当時を懐かしむように笑顔で言った。

「中学のときは、ずっと周りから言われていた。『オンはあるけど、オフがない。このままじゃ通用しない』って。だけど、現実にそういう環境がなく、自分自身にも自覚がなかった」

 東は若松中から大分U―18へと進むと、プレースタイルをガラリと変えた。それまでの王様然としたプリミティブな選手から機動力を生かす現代的な司令塔へと変貌を遂げていった。

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