新助っ人が「カメラのレンズを覗き込み」 クールな同僚も笑顔…昨季王者を変えた1枚【コラム】

湘南戦で2ゴールを決めたエリキ【写真:徳原隆元】
湘南戦で2ゴールを決めたエリキ【写真:徳原隆元】

町田から加入したエリキ、上昇気流に乗れない神戸を変えた豊かな感情表現

 4試合を終えてリーグ戦未勝利だった昨シーズンの王者ヴィッセル神戸の苦境を新加入のFWエリキが救った。3月16日に行われた湘南ベルマーレ戦で、2得点を挙げてチームを勝利へと導いたエリキは、フラッシュインタビューを受けていたため、サポーターの前に立つチームメイトへと遅れて合流。そこで飛び切りの笑顔を振り撒いた。(文=徳原隆元)

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 そして、エリキはこちらのカメラを探し出すと満面の笑みで、井手口陽介に一緒に写真に収まるように促す。静かな笑顔とはいえ、普段はクールでポーカーフェイスの印象が強い井手口がカメラに向かって、こうした表情を見せるのは珍しいのではないだろうか。そして、佐々木大樹と前川黛也も加わり、今シーズンのリーグ初勝利を笑顔で表した。まさにエリキの快活さがチームメイトに伝播した4ショットだ。

 エリキの人物像を評すると感情表現が豊かで、陽気な南米人の典型だと思う。FC町田ゼルビア時代でも試合に勝利し、スタンドのサポーターたちに向かって挨拶をしているときも、カメラを向けると屈託のない笑顔を作ってくれた。ときにはこちらが彼の母国語を解せるからか、エリキの方から近寄って来て、カメラのレンズを覗き込みポーズをとることもあった。

 2023年、町田のJ1昇格の原動力となったエリキだったが、シーズンの終盤に全治8か月を要する大怪我を負っている。昨年の5月に復帰を果たしたものの、チーム内において圧倒的な存在感を発揮することができずにシーズンを終えていた。それでもエリキはたとえ自身のプレー時間が短かったとしても、チームが勝利すれば笑顔をサポーターへと振り撒いていたのが印象に残っている。ただ、それでもサッカー選手として自分の置かれた現状に、思うところがあったのだろう。より多くの時間でピッチに立ちたいという思いが、チームを変える決断へと至ったようだ。

 そして、リーグ初先発となった湘南戦で、開幕から上昇気流に乗れない神戸を勝利へと導いた。元気印のエリキの活躍によってもたらされたこの勝利は、結果が出たことはもちろん、チーム全体が活気を取り戻すきっかけとなったのではないだろうか。カメラに向かって笑顔を見せるエリキを中心とした彼らの表情が、それを物語っているように思う。

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徳原隆元

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

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