違いに愕然「目指す子供たちもいなくなる」 フットサルへ転向…元Jリーガーの危機感【インタビュー】

JリーガーからFリーガーへ転身をした菊池大介【写真:河合 拓】
JリーガーからFリーガーへ転身をした菊池大介【写真:河合 拓】

浦和でもプレーした菊池大介「お客さんを呼べるスポーツだと思うんです」

 フットサルの全国リーグであるFリーグは、2月16日に2025シーズンを終えて、バルドラール浦安が初の優勝を成し遂げた。フットサル日本代表は、過去に4度フットサル・アジアカップ(アジア杯)を優勝しており、FIFAランクでも世界13位(アジアではイラン、タイに続く3位)と、競技力は世界的にもかなり高くなっている。(取材・文=河合 拓/全4回の4回目)

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 そんな日本の最高峰リーグであるFリーグの現状は、ほとんど注目されていない。創設18年を迎えたリーグに新たな王者が誕生したことはポジティブなニュースだが、このニュースも一般的には知らない人がほとんどだろう。それもそのはず、優勝クラブが決まるファイナルシーズンの観客動員数で、来場者がわずか200人台という試合もあった。Fリーグができた当時は、国立代々木第一体育館が埋まるほどの観衆を集めていたのだが、現在のFリーガーで、そんな経験をしている選手は少なくなっている。

 2023年にサッカーからフットサルに転向したFP菊池大介も、満員のアリーナでプレーする機会はほとんどなかった。フットサル選手として現役を引退することを表明した直後、最後のホームゲームとなった1月5日のヴォスクオーレ仙台戦(6-1)には、今季クラブ最多となる1580人の観客が集まった。しかし、かつてJ1の浦和レッズでもプレーしていた菊池は、「『最後なら行くね』と言ってくれる人がいたりして、地元の人や中学校時代の担任の先生が見に来てくれたりして、めちゃめちゃありがたいなって思いました」と前置きをしつつ、「ただ、それでも1500人なので、欲を言えば『足りない』ですし、『もっとやれるな』というのもあります。まだ逆に僕は『寂しいな』と思います」と、言葉を続けた。

 ファイナルシーズンの北九州ラウンドでは、首位に立っていたバルドラール浦安との大一番もあった。湘南は2-1で競り勝ち、チームの底力を示すとともに優勝争いに一石を投じた。だが、この試合の観客数も585人。約1万人収容のアリーナはガラガラだった。Fリーグのピッチに立ち、その競技レベルの高さを痛感した菊池は「知れば知るほど深いですし、F1は本当にレベルが高い。盛り上がる要素もあると思うんですけど、ただ、それが伝わりきらない」と歯がゆさを口にする。

「ちょっと寂しいなっていうのは、正直な気持ちですね。本当に価値があるスポーツだと思うし、お客さんを呼べるスポーツだと思うんです。それが分かってるからこそ、『何でなんだろう』と思います。こういう思いは、僕以上にずっとやっている選手たちはもちろん持っていると思います。ただ、まだそのやり方とかが整っていないのかなっていう気は、この2年間やって感じましたね」

「言い方があっているかは分かりませんが、選手たちは本当に頑張っていると思います。若い選手を含めて本気でやっていて、上を目指していると思います。ただ、環境が整っていないから、どこを目標にしていいのかが分からなくなっている感じはしますね。このクラブは好きだけど、名古屋やしながわからちゃんとしたお金を提示されて、『プロで契約しましょう』という話を受けたら、行きたいという気持ちになるのはアスリートとして当然です。でも、それを本気で全員が目標にしているかと聞かれると分からない。海外に行きたいのか、ちょっとビジョンが見えないのはありますよね。いつまでやりたいとか、いつまでやって次にどういう道に進みたいか。そのために今、何を準備するか。それは選手によってだとは思いますが、あまり見えてこない部分があります」

 サッカーでは、Jリーグで活躍して欧州へという流れができている。しかし、フットサルでは日本に名古屋オーシャンズ、しながわシティと2つのプロクラブがあるものの、そこに入れるのは一握りの選手のみ。「プロ」の環境に憧れながらも、目標にできない選手が多くなるのも仕方がない側面がある。若くしてフットサル日本代表に選ばれても、将来のことを考えて20代前半で競技を断念する選手も少なくない。菊池もその点を課題として口にする。

「やっぱり、そこは早く整えていかなきゃいけない、Fリーグの最重要課題だと思います。そうじゃないと選手は離れていってしまいますし、Jリーグからくる選手はもちろん、最初からフットサルを目指す子供たちもいなくなる。サッカーとフットサルがあったら、絶対にサッカーに行ってしまうと思います。僕も子供に『サッカーとフットサルのどっちがやりたい?』と聞いて『フットサル』と言われたのですが、『今はとりあえずサッカーを目指せ』って言いましたけれど、この環境だとそういうことになると思うんです。やっぱり子供たちに夢を与えるとか、この世界はこういう世界だというのを見せないといけないですし、ファイナルシーズンでああいう環境というのは、やっぱり良くないし、寂しい。こんなに価値のあるスポーツなのだから、もっと見てもらいたいと思います」

 今シーズン限りで現役を退くことになる菊池は、引退後には総合型スポーツクラブである湘南をさらに盛り上げるべく活動する。現在、Fリーグは元サッカー日本代表MF松井大輔氏が理事長を務めているが、両競技のトップリーグを経験した菊池にも、これまでの経験を日本のフットボールに還元してくれるはずだ。

(河合 拓 / Taku Kawai)



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