久保建英はゼロトップに適性…日本代表のPSG方式「最強3トップ」を考察【コラム】

CLでリバプールを撃破したPSG、CFらしいCFがいない特徴的な3トップ
UEFAチャンピオンズリーグ(CL)ラウンド16でパリ・サンジェルマン(PSG)がリバプールを破ってベスト8へ進出した。第1レグは圧倒的に攻勢ながらハーヴェイ・エリオットの1点でPSGが敗戦。しかし、アウェーのアンフィールドではウスマン・デンベレのゴールで2試合合計1-1とし、PK戦の末に勝利した。
第2レグは互角の流れだったが、後半からPSGがボールを保持して押し込んでいる。優勝候補のリバプールをやや上回っていた。
2試合通じてヴィティーニャのゲームメークが素晴らしく守備も堅かった。さらにFWの破壊力でもリバプールを少し上回っていた。先発はデンベレ、クヴィチャ・クワラツヘリア、ブラッドリー・バルコラで第1レグと同じ。途中でデジレ・ドゥエが出てくる交代策も同じ。
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ちょっと変わっているのが、3トップにセンターフォワード(CF)らしいCFがいないことだ。
デンベレが一応CFなのだが、両足利きで左右どちらのサイドもできる。CFというよりウイングだ。バルコラは点取り屋だがやはりCFではなく左サイドを得意としている。ナポリから移籍してきたクワラツヘリアも左サイドが主戦場。3人ともサイドアタッカーなのだ。
スタートは右からクワラツヘリア、デンベレ、バルコラ。しかし、10分も経たないうちにバルコラとクワラツヘリアの左右が入れ替わる。前半の終わり頃は右がデンベレ、中央にクワラツヘリア、左がバルコラになっていた。後半22分にバルコラと交代したドゥエも右にいたのが途中で左へ変わっている。ドゥエも先発の3人と同じくサイドアタッカーだ。
CFらしいCFとしてはゴンサロ・ラモスがいるのだが、第2レグの延長後半15分で登場しているのでPK戦要員と考えていいだろう。
PSGの3トップはドゥエも含めて個の突破力に優れ、1人で打開してフィニッシュまたはラストパスへ持っていく能力が高い。リバプールにもモハメド・サラー、ルイス・ディアスがいるが、この2試合に関してはPSGのほうがより脅威だった。
日本代表とPSG、優れたサイドアタッカーが多い共通点
日本代表もPSGと似ていて優れたサイドアタッカーが多い。右の伊東純也、堂安律、久保建英、左には三笘薫、中村敬斗。誰が出ても強力な面々である。一方で、CFは決定版がいない。上田綺世、小川航基、前田大然などが起用されてきたが、サイドアタッカーに比べるとやや物足りないのが現状だろう。
では、PSG方式でウイング3人を並べる起用法は可能なのだろうか。
ブライトンでドリブラーからフィニッシャーへシフトしつつあるように見える三笘、おそらく代表で最もシュートの上手い中村、カットインからの一発に威力のある久保、堂安。さらに伊東もパワフルなシュートと並外れたスピードで裏を取る能力がある。それぞれ得点力は持っている。
では誰がCFをやるのか。PSGは適宜に誰かが中央にいた。前提として、ロングボールを多用しないこと。ポストプレーを問われないことが条件だ。日本もPSG同様にボールを保持して運べるということなら、CFはたぶん誰がやってもいい気がする。偽9番(ゼロトップ)としては久保に適性がありそうに思えるが、仮のCFなのでそこは特に問題ではない。
PSGと異なるのは左右の互換性がないことだろう。伊東、久保、堂安については左右どちらもやったことがあるが、三笘の右はほとんどない。中村も左の印象が強い。ただ、クワラツヘリアとバルコラにも同じことが言えるので、やってみれば意外と違和感なくこなせるのかもしれない。
いずれにしても、PSGがCFなしの3トップでも成立することを証明していたのは面白く、日本代表にも適用できるかもしれない。

西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。