大学生が考えるサッカー人気拡大のアイデア 「本当に悩ましい」…一部年齢層に難しい問題【インタビュー】

サッカーのネット配信移行に対する大学生の声
クラブ本拠地のかつての盛り上がりを取り戻そうと活動する新潟大学のサークルがある。その名も「新潟大学アルビレックスプロジェクト」。試合観戦やSNS発信をメインに行うなか、現役大学生の目に現在のJリーグはどう映っているのか。感じる課題やサークルの運営を通じて考えたアイデアについて訊いた。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・山内亮治/全2回の2回目)
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「4万人のサポーターが熱狂したビッグスワンをもう一度」「アルビレックスを通して新潟を盛り上げる」、この2つのビジョンを掲げ活動している新潟大学アルビレックスプロジェクト。2013年からさまざまな活動を続けてきたが、近年はコロナ禍の影響で大きな苦労も。自粛などを受け、ノウハウが継承されず実行に移せていない活動もある。
そんな現状について、新代表に就任した3年生の佐藤惇矢さんは「本当に一から始めたサークルといった認識が正しいのではないかなと思っています」と話す。それでも、クラブとサッカーへの熱い思いは変わらず。ホームとアウェーの試合観戦、その様子のSNS発信を通じてチームの魅力発信に日々努めている。
ただ、サッカーに関しては昨今、地上波からネット配信への中継移行による露出減少を受け、人気低迷をささやく声がある事実は否定できない。これについて現役大学生はどう感じているのか。話を聞くと、中継のネット配信移行はサッカーを観たい大学生にこそ頭の痛い問題に思えてくる。
「スポーツチャンネルに契約しないとサッカーを日常的に観られない環境がある事実は、競技への関心低下を招く一因となってしまっているかもしれません。特に大学生にとって、月々の限られたお金をどこにどうつかうのかは本当に悩ましい問題ですから。サブスク費用はどうしても躊躇してしまいます。こうした一部の年齢層にとって難しい問題もサッカー人気の低迷と無関係ではないのかもしれません」
さらに、佐藤さん曰くサークル内には「アウェーの試合だけ見られればいいと考えているメンバーもいます」とのこと。そうした声を踏まえ、配信サービスにはよりフレキシブルな低料金プランの販売があるべきだと訴える。
「学業の忙しさやお金のことを考えると、月額ではなく試合ごとに低料金で視聴サービスを購入できる方法があってもいいですよね。お金を細かく使える選択肢があればいいのかなと」
もちろん、配信各社は学生向けや期間限定の早期割引のサービスで幅広く利用者への配慮を行っている。とはいえ、利用者によってニーズは異なり、配信企業ごとにカバーしているリーグや大会はさまざま。佐藤さんの指摘はライトとコア層、サッカーファン全体にとって得られるメリットが大きいかもしれない。
スタジアムへ足を運びやすくなるために
また、新入生の試合招待、メンバー内での観戦を続けるなかで佐藤さんはJリーグが持つ魅力への思いを強くした。
「跳びはねたり大声を出したりするサポーターの熱やその熱気に包まれるスタジアムの雰囲気は、ほかの娯楽にはない魅力だと感じています」
かくいう本人も、新入生だった頃にアルビレックスプロジェクトの先輩たちに連れられ新潟に魅せられた1人。実体験を踏まえ、スタジアムへ足を運ぶためには誰かから誘われる、そのためのきっかけが生まれやすい状況が必要だと考えている。
「大学生の立場から考えると、例えばペアでチケットを買えば安くなるとか、チケット購入でライト層向けに優しい施策がもっとあっていいと思っています。サッカー好きになるためには、何かたった1つでいいのできっかけが必要です」
サークル新代表として思い付いたアイデア
配信サービスやチケット購入の変化を望むだけでなく、サークルを運営する立場から貢献できることもあると考えている。「実現できる分かりませんが」と断りつつ、佐藤さんはこんなアイデアを語ってくれた。
「僕たちのように地域密着の活動を行うサークルに企業から協賛を受けられないかと思うことがあります。僕たちはこれまで、アルビレックス新潟の魅力を伝えようとクラブと協同し、さまざまな活動を展開してきました。なので、これまでの経験を生かし、クラブだけでなくスポンサー企業とも連携していけないかと構想を練っています。
大学サークルという立場を考えれば、例えば、企業と就活生をマッチングさせることもできなくはありません。そこで、協賛の見返りとして、僕たちがその企業をPRするという活動の実現可能性もあるんじゃないかと最近考えています。
特に僕たちの目から見ても、卒業後に県外へ仕事を求め人口が流出する状況は新潟県や地元企業にとって良い状況とは思えません。そういうわけで、協賛があれば僕たちも現在の活動をより充実したものに発展させていくことができるでしょうし、Win-Winではないでしょうか」
大学生という立場やサッカーにちなんだ活動を行ってきたことで見えてきたJリーグ、サッカーを楽しむための環境における課題。一般の社会人、コア層では気づきにくい指摘や思いつかないアイデアが生かされ、この国のサッカー文化がさらに良い形で発展する未来が望まれる。
(FOOTBALL ZONE編集部・山内亮治 / Ryoji Yamauchi)