U-23消滅で新たな受け皿…明治大卒が新たなブランドに 期待のルーキー「ビビっていたら」

FC東京U-23から明治大学を経てトップチームに加入した常盤亨太【写真:Getty Images】
FC東京U-23から明治大学を経てトップチームに加入した常盤亨太【写真:Getty Images】

明治大卒で活躍する選手が増加

 明治大学卒のプロサッカー選手は枚挙にいとまがない。今シーズンのFC東京にも新卒で常盤亨太、ブレーメンⅡからの移籍で佐藤恵允が加入しているが、すでに長友佑都、小柏剛、岡哲平が所属済み。レノファ山口FCに期限付き移籍中の岡庭愁人も明治大学卒で、一大派閥になっている。

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 過去には三田啓貴(オリヴェイレンセ)、丸山祐市(川崎フロンターレ)、室屋成(ハノーファー)、安部柊斗(モレンベーク)、中村帆高(FC町田ゼルビア)、蓮川壮大(清水エスパルス)も所属。FC東京トップチームを経ていないFC東京アカデミー出身の現役プロ選手も含めると、明治大学とのつながりの濃さは明確だ。

 そして“明治大学卒”は即戦力という印象が強く、ひとつのブランドになっている。在学中にプロ契約を結んだ室屋、特別指定選手だった大学4年時にJ1デビューを果たした安部が最たるものだが、2024シーズンに加入した岡も負けてはいない。1年目からリーグ戦19試合に出場そのうち先発は16回。目標としていた開幕スタメンこそならなかったが、主力としての働きを見せた。

 年々、大学はポストユース世代の育成期間としての重要性が高まっている。背景には、高校を卒業したばかり、あるいはFC東京U-18からの選手たちが、J1では出場機会を得ることが容易ではなく、結果として成長させることが難しいという問題がある。松木玖生のような例は稀であり、土肥幹太にしても2年目の2024シーズン、若手の起用に積極的だったピーター・クラモフスキー前監督の下で出場試合数を伸ばしたが、1年目のリーグ戦出場はJ1最終節の湘南ベルマーレ戦のみだった。

 以前はFC東京U-23が高卒新人の受け皿になっていたが、コロナ禍に予定よりも早く消滅。現在は他クラブへの育成型期限付き移籍が18歳から23歳までの選手の育成手段の常道となりつつある。野澤零温は加入1年目に小平での練習とキャンプを味わうことなく始動からSC相模原に育成型期限付き移籍。2025シーズン加入の永野修都も野澤と同様、1年目の始動からガイナーレ鳥取へと旅立った。

 永野と同じ世代で一足早くプロ契約を結んだ佐藤龍之介も2年目の今年、ファジアーノ岡山への育成型期限付き移籍を選択。久保建英ですら出場機会を求めて横浜F・マリノスへの半年間の期限付き移籍を選択したことを考えると、いかにJ1リーグ戦出場というハードルが若手にとって高いかということがよく分かる。

 その点、高校生を預かり2年から3年でプロの水準に高めてくれる大学サッカー部はJクラブにとってもありがたい存在であることは間違いない。2026-27シーズンの加入が内定し、2月14日に特別指定選手承認が発表された小湊絆は法政大学に在学中。在籍中の選手で言えば寺山翼は順天堂大学、西堂久俊は早稲田大学からの加入だ。FC東京U-18から直接昇格するのではなく、明治大学を経て東京に帰還するというパターンもおなじみのものになってきた。

 今年東京へとやってきた常盤はその好例。同じボランチでプレーする橋本拳人という強力なライバルであり大先輩との競争も「楽しみですよ」と言い、自らの上限を伸ばしていくための壁として歓迎するふてぶてしさがある。沖縄キャンプ中の練習試合、名桜大学戦では出場した時間帯にキャプテンマークを巻き、松橋力蔵監督と話す姿にも風格が漂っていた。

 明治大学卒の選手に感じるのは、この堂々とした立ち振る舞いだ。内心、弱気に感じるところもあるのかもしれないが、彼らは常日頃強い気持ちを見せている。ピッチ上で活躍するには技術や身体能力だけでなく、強い自信も必要だ。「ビビっていたら実力を発揮できない」と、常盤。開幕戦でのデビューは逃したものの、そのくらいで下を向く男ではない。昨年の岡と同様にシーズン中で巻き返し、“明治大学印”の実力を示していくのではないか。そう期待したくなる空気を、プロ1年目から身にまとっている。

(後藤 勝 / masaru goto)



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後藤 勝

後藤 勝
ごとう・まさる/小平市在住のフリーライター。出版社、編集プロダクション勤務を経て独立。1990年代末に「サッカー批評」「サッカルチョ」などに寄稿を始めたことがきっかけでサッカーに携わるようになり、現在はFC東京、FC岐阜、東京都社会人リーグを中心に取材。著書に「トーキョー ワッショイ! FC東京 99-04 REPLAY」(双葉社)「エンダーズ・デッドリードライヴ-東京蹴球旅団2029」(カンゼン)がある。ウェブマガジン「青赤20倍!トーキョーたっぷり蹴球マガジン」「ぎふマガ!〜FC岐阜を徹底的に応援する公式ウェブマガジン〜」の執筆を担当。

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