29歳の新キャプテンが危機感 リーダー格が異例の途中退団…J1低迷で「本当に変えなきゃ」【コラム】

浦和の新キャプテン関根貴大が今季J1初勝利で心掛けた舞台裏
浦和レッズは開幕5試合目にして初勝利を挙げた。”昇格組”のファジアーノ岡山を相手に、終盤はルカオに決定的なシュートを打たれるなど、90分通して盤石だったわけではない。そもそも内容的に考えれば終盤に苦しくなる前に、2点目、3点目を奪っておくべきだったという厳しい指摘もできるが、攻守両面で改善が見られたことは今後の戦いに向けても大きい。
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スタートからアグレッシブにゴールを目指し、課題だった3バック相手の守備に関しても、1トップのチアゴ・サンタナに左のマテウス・サヴィオ、右の金子拓郎を加えた3枚でプレッシャーをかける。4-3-3を基本としながら、マークすべきポイントを明確にして、ポジションチェンジなどには受け渡しで対応した。そして、うまくハマらない時にはプレッシングにこだわらず、普段どおりの4-4-2のブロックで構えるなど、うまく整理されていた。
キャプテンの関根貴大は「フォワードと(浦和の)ウイングが3枚に対してはめにいく形で、相手のウイングバックに対しては僕らサイドバックがスライドして、ボランチはボランチを見ながら。明確に誰がどこを見るかを決めながら行きました」と語る。もちろん岡山が0-2で敗れた前節の柏レイソル戦ほど、可変性の高いビルドアップをしてこなかったことは浦和がそうした守備を機能させていた要因だろう。
関根も「そこまでつないでくるチームではないと思っていたので。自分たちが勢いよく、タイミングよく出られればボールを蹴ってくれると思っていて、そういう展開に持って行けた」と認めるが、ここまでの反省を生かして、1週間でディフェンスを整理したことが、浦和にとって有利な状況を生んだことは間違いない。
「今日は特に、どのタイミングで4-4-2に戻すかとか、前から行けなかった時の対処法は選手の中でも話してたし、僕も全員とコミュニケーションを取れたので。そこが良かったと思います」
そう語る関根はキャプテンとして、これまで以上になるべく全員と試合中にコミュニケーションを取ることを心掛けたという。昨シーズンから「ピッチに戦術リーダーが必要」と主張していた関根は1人1人の選手は考えていることがあっても、それがバラバラだと攻守両面で、チーム全体としての絵を描けないことが、浦和の大きな課題と考えていた。
今シーズンはキャプテンという立場になって、より周囲とコミュニケーションを取りやすくなったというが、それでもチーム全体に伝えるというところは徹底できていなかった。岡山戦では「全員とコミュニケーション取ってたから。(安居)海渡もそうだし……右サイドの(金子)拓郎とかは近いから(元々)よく取るけど、逆サイドの選手ともすごい取ろうとは意識してました」と関根。もちろん、流れの中で逆サイドや前線に伝えることは難しい。
「思ってても時間を作らないといけないから。試合展開が早かったら、その取る時間もないから、どうやって取れるかなって自分の中でも意識してたし、それが後半途中、選手交代するタイミングだったり、前半セットプレーのタイミングだったりを意識して、僕は話しかけたりしてました」
岡山戦はうまく行っている時間帯が多く、関根の感覚としても、そこまで多くのコミュニケーションが必要な試合展開ではなかった。それでも「今の状況で大丈夫かっていう確認を取ることで、このまま続けていいんだとか、うしろの選手も前が大丈夫だって思ってたら信じてついてくる」という信念を持って、できるかぎり声かけに努めた。

「この勝利を次に生かさなきゃいけない」と気を引き締め次戦へ
昨シーズンは夏にキャプテンだった酒井宏樹や中盤の要だった岩尾憲、ディフェンスリーダーのアレクサンダー・ショルツ、そして一時は酒井の後任としてキャプテンを任された伊藤敦樹と4人のリーダー格が抜けて、純粋な戦力としての痛手という以上に、チームがうまく回らない要因になった。そうした反省も踏まえて、浦和はキャンプから選手間で多くコミュニケーションを取ろうというのを1つのテーマにしている。
スコルジャ監督は新たに29歳の関根をキャプテンに指名すると同時に、前キャプテンのGK西川周作、渡邊凌磨、原口元気、マリウス・ホイブラーテン、マテウス・サヴィオを“キャプテングループ”としているが、関根とともに“戦術リーダー”的な役割を果たしていた渡邊が第2節の京都サンガF.C.戦で前半に負傷交代し、ここ3試合欠場が続いている。その影響も少なからずあったと考えられるが、岡山戦は良い意味で渡邊の不在を感じさせなかった。もちろん彼が戻ってくれば心強いが、この段階でチームが心身両面でまとまりを見せたことは大きい。
クラブ下部組織出身の関根は「これを勝ったら何かが変わると信じてやっていたし、それなら本当に変えなきゃいけない。この勝利を次に生かさなきゃいけない」と強調する。岡山戦がたまたまチームとしてうまく行ったのか、本当に成長しているのか。次節、4連勝中の鹿島アントラーズ戦とのアウェーという、まさしく序盤戦の大一番は格好の証明場所と言えるだろう。
(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)

河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。