昌子源は森保Jに必要? 妻に引退示唆→町田で復活…本大会に必要とされる“ベテラン枠”【コラム】

谷口彰悟は11月にアキレス腱を断裂して手術を受けた
いよいよ日本代表の大事な試合が迫ってきた。3月20日のホーム・バーレーン戦で勝利を収めることが出来れば、2026年アメリカ・カナダ・メキシコワールドカップ(W杯)への出場を決める。
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ここまで順調に勝ち星を伸ばしてきた日本代表だが、その一方で選手起用では難しい試行錯誤が続いている。一番の問題はケガ人が多いこと。2024年11月の予選には、2022年カタールW杯のメンバー、冨安健洋(アーセナル/イングランド)、伊藤洋輝(バイエルン/ドイツ)、谷口彰悟(シント・トロイデン/ベルギー)がケガのため招集できなかった。伊藤は2025年2月に復帰を果たしたものの、冨安と谷口はまだリハビリ中だ。
今の日本代表は選手層が厚くなっているため、他の選手で穴を埋めてきた。高井幸大(川崎)や望月ヘンリー海輝(町田)などの若手も入れて、将来も見据えてきた。
それでも考えておかなければならないポイントがある。それは、いざというとき安心して投入できるベテランを一人入れておいたほうがいいのではないかという点だ。
2022年カタールワールドカップでは谷口がその役を果たした。谷口はスペイン戦で先発すると、クロアチア戦でもフル出場し、ケガを抱えながら出場していた冨安や板倉滉(ボルシアMG/ドイツ)をきちんと支えたのだ。
その谷口は2024年11月にアキレス腱を断裂して手術を受けた。その代わりの選手を試しておいたほうがいいだろう。
そんな頼れるベテランとして、今とてもいいプレーを見せているのが昌子源(FC町田ゼルビア)だ。2018年ロシアW杯に出場し、その後トゥールーズ(フランス)に移籍。しかし負傷したのちの回復が思うように行かず帰国。G大阪で復帰するものの、G大阪でも後遺症に苦しんだ。その後、鹿島を経て2024年に町田へと移籍している。
もっとも、町田でも2024年は開幕前に負傷し、フル出場できるようになったのは第9節から。しかしそこから次第に調子を上げ、38試合34失点というJ1リーグ最少失点に貢献するとともに、町田の躍進を支えた。

今季ハイパフォーマンスを披露
今季もすでに注目に値するプレーをいくつも見せている。たとえば第2節、FC東京とのアウェイ戦。前半終了間際の45+3分、昌子はマルセロ・ヒアンとボールを追う。抜かれればGKと1対1となる場面を作られてしまうところだった。また、もしも相手に手をかけてしまえばSPA(Stop a Promising Attack:チャンス阻止)で昌子は警告を出される場面でもあった。
しかし昌子は体のぶつけ合いでこの場面を凌ぎ、最後はマルセロ・ヒアンのファウルとして終わらせた。この場面ではベテランらしい駆け引きをしっかりと見せた。
また第3節、東京V戦では75分に素晴らしいカバーを見せた。クリアボールを翁長聖が体に当て、ゴールに向かって独走する。翁長は細かくステップを踏んでGK谷晃生を外し、谷の横まで戻った昌子もスリップさせるとシュートを放った。
だが昌子は倒れたまま首を伸ばしてボールの前に顔を出す。そして顔面に当てるとゴールを阻止した。2010年南アフリカワールドカップでイングランドのジョー・テリーがスライディングの後にさらに頭からボールの前にダイブした場面を思い起こさせるようなプレーだった。
町田のキャプテンとして精神的にも充実している。第4節を終えて2勝2敗というのは、昨シーズンはこの時期すでに首位に立っていたことを考えると物足りないかもしれないが、敗戦のあともしっかり報道陣の前で厳しい質問に答えている姿は、多くの選手の手本となるべき姿だろう。
足首を負傷していた時期には、「妻に1度言ったことがあるんです。もう(サッカーを)辞めようかなって」というほど悩んでおり、その後も出場機会は少なくなっていった。しかしそこで腐らず、今は輝きを取り戻している。
町田は昨シーズン、4バックから3バックに変更し、今シーズンは3バックで戦っている。今の日本代表が3バックを採用していることを考えると、代表に戻ったとしても違和感はないだろう。また、今年のシーズン前のキャンプでは3バックの右、現在は左といろいろなポジションが出来るのも強みだ。
心配されるのは年齢だろうが、現在谷口が33歳だということを考えると、32歳の昌子が代表に戻ってもおかしくはない。
町田には他にも負傷が癒えて今季で色の活躍を見せている中山雄太と相馬勇紀がいて左サイドを構築していることを考えると、昌子までセットにして代表に生かしてはどうかと思う。それくらい今の昌子は充実しているのだ。
(森雅史 / Masafumi Mori)

森 雅史
もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。