181cm“薩摩のファン・ダイク”が台頭 ストライカーで魅了も…「やっぱり僕は守備の選手」

鹿児島城西の2年生・浮邉泰士が辿った異例キャリア
昨年の夏に愛知県で行われたフェスティバルで見た時は「面白いFWがいるな」という印象だった。鹿児島城西高校(鹿児島)の2年生・浮邉泰士は181センチのサイズを誇り、前線で相手を背負ってポストプレーをしたり、空中戦で競り勝ったりと荒削りながらも可能性を感じさせる選手だった。
鹿児島城西の新田祐輔監督に話を聞くと、「今年にCB(センターバック)からFWにコンバートした選手なんです。シュートも上手くて期待しています」と口にしたように、彼は身体能力が高く、同じ2年生でプロ注目のFW大石脩斗との2トップは迫力的にもかなり魅力的なものだった。
しかし、その年の選手権予選を見ると、浮邉はCBにポジションを戻していた。FWの経験もベースになったのか、身体の使い方はもちろんのこと駆け引きのうまさも身について、県予選決勝ではMF名和田我空(ガンバ大阪)らを擁する神村学園を相手に完封勝利に導く活躍を見せた。
年が明け、2月の九州新人大会。浮邉は背番号5を背負ってディフェンスリーダーとして君臨していた。
「CBは中学時代までずっとやっていて、ずっと愛着のあるポジションだし、好きなポジションだったので、高1で右サイドバックをやったり、昨年はFWをやったりと色々悩むこともありましたが、こうして再びCBに戻ってきて、素直に嬉しかったですし、どれもプラスの経験になっています」
こう充実の表情を見せたように、身体能力の高さというベースの部分に、全くやったことがないほかのポジションを経験したことで、ピッチ上での視野の違いや考え方の違いを学ぶとともに、スピードや対人などどのポジションでも通用する部分があったことを感じ取ることができた。
「改めてこのポジションに戻ってきて、やっぱり僕は守備の選手だと再確認する一方で、もっと駆け引きを鍛えていかないといけないと改めて感じました。これまではCBとしてボールを奪ったり、突破を止めることだったりに喜びを見出していて、自分は前に強いCBだと思っていましたが、それだけじゃダメだと。相手より早く動いたり、相手の意図を汲み取って誘導して奪ったりと、駆け引きで上回って勝つことをできるようにならないといけないと思ったし、実際にそれ相手が困っていることが分かると『よし!』と思うようになりました」
「なんでもできるようなCBになりたいと思います」
受動的な守備から能動的な守備を磨くことに喜びを見出すようになった。CBに戻ってから経験したプレミアリーグWESTの数試合と選手権の経験も彼のこの思考の変化に大きな影響を与えた。
「レベルの高い相手になるとどうしてもブロックを敷いて弾く守備が多くなってしまいます。でもプリンス降格や選手権初戦敗退(金沢学院大附属に0-0のPK戦負け)を味わったことで、それだけでは全国で勝てないと痛感しました。ブロックで対人を発揮することはやりながらも、僕が全体を動かしてチームとして相手を追い込んでボールを奪って、2次攻撃、3次攻撃につなげられるチームにしていきたいと思っています」
九州新人大会は準々決勝で佐賀東に1-2で敗れたが、彼の積極的なラインコントロールや駆け引きの妙は随所に見ることができ、チームの進化も感じ取ることができた。
「CBとして1つのプレーの重みとか、FWの能力に対して上回れるようにならないといけないし、ゲームの流れの中でもっと向上してうしろからもっと盛り上げていきたい。プレスも行けるし、対人も行けるし、駆け引きできるし、ビルドアップもできる。ファン・ダイクのような、隙のないなんでもできるようなCBになりたいと思います」
一度離れたことで再確認したCBの醍醐味と、新たなCB像。進化を求めて薩摩のファン・ダイクは力強く走り出している。
(FOOTBALL ZONE編集部)