15歳で地元を離れ…公立中から逸材出現、県内強豪からオファー殺到「中体連でも力磨ける」

九州新人大会に出場した神村学園の倉中悠駕【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】
九州新人大会に出場した神村学園の倉中悠駕【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】

公立中から全国常連の高校へ…神村学園の9番・倉中悠駕の歩み

 2月の九州新人大会。神村学園高校(鹿児島)の背番号9を纏うFW倉中悠駕のプレーにかなり惹きつけられた。スピード、身体操作、狙っている場所とシュートスキル。まさに9番タイプのストライカーが今年の高校サッカーを盛り上げてくれそうだ。

 180センチのサイズを持ち一瞬のスピード、スプリント力も兼ね揃えた倉中は、技術レベルの高い選手が揃った神村学園において、ストライカーの役割だけではなく、リズムチェンジャーや縦へのスピードを一気に加速させる試合の流れに影響を大きく及ぼす存在となっている。

 昨年は定位置こそ掴み切れなかったが、プレミアリーグWESTで4試合に出場。高いレベルで経験を積んだ彼は、今年9番を託されて最前線に立ち、九州新人大会では4ゴールをマークして大会2連覇に大きく貢献した。

 なかでも決勝の東福岡戦で見せた先制弾を鮮やかだった。カウンターからMF佐々木悠太がボールを前に運ぶと、一度斜め前に走る動きを見せてDFを内側に絞らせてから、一気に膨らむように前のスペースへスプリントする。

 その動きに合わせて佐々木も右足インフロントにかけて、内カーブがかかるスルーパスを出す。この2人の阿吽の呼吸で東福岡DF陣5人を無力化すると、倉中はトップスピードから回転のかかったボールを右足アウトサイドでワンタッチコントロールしてから、GKが飛び出してくるのを見て右足インサイドで素早くゴール右隅に流し込んだ。センス抜群のフィニッシュは、彼の能力の高さを示していた。

「常に相手の背後を取ることを考えていて、最初に相手を見てから、間接視野でボールを見ながら動いています。入学当初はできていなかったけど、有村(圭一郎)監督やコーチから言われて意識するようになりました」

 宮崎県出身の倉中はクラブチームではなく、日南市立吾田中学校出身。中体連のサッカー部でプレーし、日章学園中と宮崎日大中という全国でもトップレベルの私立中学の壁に挑み続けた。中学2年生の時は決勝で日章学園中に、3年生の時に準決勝で宮崎日大中に敗れて全国には出られなかったが、県選抜に選ばれるなど、公立中の中ではかなりの奮闘を見せた。

「中体連でも力は磨けると思っていました。それに僕らの代は選手がある程度揃っていたので、日章や日大を倒して全国に行くというモチベーションが高かった。吾田中では身体的にかなり鍛えられて、ラフなボールを収められるようになったり、スピードも磨かれたと思います。それに礼儀などをしっかりと学ぶことができましたし、僕の中では大きな3年間でした」

 卒業時には九州県内中の強豪校から誘いを受けたが、その中で「神村学園が全国優勝に近いと思った」と地元を離れることを決意。入学してからは神村学園のサッカーに順応しながら、かつ自分の特徴を出していくことを日々意識することで、進化を遂げてきた。

「背後を狙えるし、つなぐこともできるサッカーの中で僕のポテンシャルを引き出してもらえる感覚があります」

 この手応えこそ、倉中が神村学園にやってきた最大の狙いでもあった。ロングボールが来る時もあれば、ショートパスで崩す中に関わってフィニッシュを狙う時もある。ショートパスをつないでサイドチェンジからのクロス、そしてミドルパスから密集を作って一気にスルーパスで射抜くなど、豊富な中盤のバリエーションの中で、彼は9番タイプのストライカーとしてポストプレー、背負ってからの抜け出し、落ちて関わってからの飛び出し、そして中学時代に磨かれた1発での抜け出しを、状況判断を伴いながら取捨選択することが習慣化されて行った。

 着実に増えていく引き出しとスケール感。「中体連から高いレベルに上がっていく。それがストーリー的にも気持ちがいいと思っています」と、将来のビジョンを持って努力を重ねてきたストライカーは、まだまだ進化の途中にある。

(FOOTBALL ZONE編集部)



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