強豪校で驚きのブレイク…CBからコンバートの逸材 西日本で狙う「本物のストライカー」

佐賀東FW石川僚祐が目指す「より頼れるストライカー」
九州県内の強豪校には個性的で面白いストライカーがいる。佐賀東(佐賀)の高校2年生FW石川僚祐もその1人。非常に魅力的な選手だ。
178センチのサイズを持つ石川は、動きながら裏抜けを狙いつつ、足もとの技術が高く、ただそれをドリブルなどで発揮するだけではなく、身体操作と紐付けながらプレーをするのが特徴だ。
具体的に言うと、フィジカルコンタクトで勝ってスペースを確保してボールを収めたり、相手のバランスを崩してからボールを前に運んだりと、身体の使い方がうまい。
さらにシュートの際の冷静さがあり、相手DFやGKの重心や狙いを把握したうえで、逆をついて決めるなど、駆け引きの質が非常に高いストライカーだという印象を受ける。
九州新人大会では持ち前の身体操作とシュートセンスを発揮し、5ゴールをマーク。グループリーグ第2戦の大分戦でハットトリックを達成すると、鹿児島城西との準々決勝でも決定力を発揮。中盤での潰し合いからMF岡本裕輝がこぼれ球に反応した瞬間、相手最終ラインの位置を確認してから一気に裏のスペースに走り出す。岡本からのスルーパスに抜け出すと、GKが左足を伸ばしてくるのを察知して、その足の上を右足インフロントで射抜いて、ゴール右隅に叩き込んだ。
日章学園との3位決定戦でも、0-1で迎えた前半25分、ペナルティーエリア中央のスペースに右から左斜めに飛び出し、トップ下のMF三原拓実からスルーパスを受けると、「右から相手が来ているのが分かった」と左足でキックフェイントをして相手のシュートブロックを交わした。フリーになった石川は右足のシュートモーションに入ると、「GKが(自分から見て)右に飛ぶ準備をしていたので逆を狙いました」と対角のゴール左隅に強烈なシュートを突き刺した。
さらに後半、自陣からのロングパスに抜け出すと、カットインでDFを1枚交わして、プレスバックが来る瞬間に追い越してきた三原に柔らかなスルーパスを送り、逆転弾を引き出した。
この勝利でチームは九州大会を3位でフィニッシュした。彼のゴールはいずれも前述した冷静な駆け引きと確かな技術、そして身体操作が噛み合った、相手の守備の矢印を折るプレーが表現されている。
「去年は最前線でキープすることを武器にする選手だったのですが、収まらないこともあったので、最高学年になったらそれではいけないと。キープ力を磨きながらも、それ以外の動きももっと取り入れていかないと本物のストライカーにはなれないと思うので、もっと力をつけていきたいです」
サガン鳥栖U-15唐津時代はCB(センターバック)だった。当時は駆け引きと対人能力を売りにしていたが、佐賀東に入学してからFWにコンバートする。
「最初は動きが分からなかったり、シュートの質が低かったりと思うようにいかなかったのですが、徐々にもともとCBだったことを生かして、相手の心理や狙いを考えて、その逆を突くプレーを引き出すことを意識してやるようになったら、徐々にやれることが増えていきました」
持ち前の思考力をフルに発揮し、昨年からエースストライカーとしてチームを牽引するようになった。だが、選手権では初戦で流通経済大柏と激突した際に、大きな力の差を痛感したという。
「流通経済大柏の前からのハイプレスは本当に強烈でしたし、球際の部分とか、ワンツーをしてもついてくるし、必ず身体を当ててきて自由にさせない部分は驚きでした。シンプルにフィジカルレベルが上で、チームとしての強度の差を痛感したので、これはもう日々のトレーニングの意識から変えていかないといけないと思いました。試合だけ強度を上げたって勝てないので、日常から高い強度とフィジカルトレーニングを増やしていかないといけないと思いました」
この意識変化の成果が早くも九州大会で形となって現れた。当然、これで満足をするわけがない。
「苦しい時に仲間を助けられて、みんなを鼓舞するストライカーになりたいです」
危機感と向上心を持って、より頼れるストライカーになるために石川はこれからも貪欲に自己研鑽を続けていく。
(FOOTBALL ZONE編集部)