中3で抱いた劣等感「一度も練習できなかった」 強豪校進学も…もがく日々「競争で負けた」

尚志高校CB松澤琉真、厳しい競争下に置かれる今の思い
187センチのサイズを誇る尚志高校(福島)のCB(センターバック)松澤琉真は今、まさに今後の人生を大きく変えるような重要な時期を過ごしている。
FC東京U-15深川から「プレースタイル的に合っていた」と選手権常連校の尚志にやって来たが、当初はFWとしての入学だった。だが、レベルの高い環境の中で思うように自分の持ち味が出せなかった。
「深川の時も入った時から僕は下手な部類の選手だった。その中でもレギュラーを目指したのですが、なかなか試合に絡めず、U-18に上がることが出来そうな選手は中3になるとU-18の練習に参加をするのですが、僕は一度も練習参加はできなかった。この時点で『高校サッカーで巻き返そう』と思っていました。でも、いざ入った時は周りの選手たちもJクラブの下部組織から来ている人が多くて、主軸を張っていた選手もいるし、ギリギリで落ちている人たちばかり。僕みたいにギリギリにも行かない選手は少ないと感じたので、やっていけるかどうか不安でした」
だが、中学時代に26センチも伸びたというサイズとキックのうまさという魅力はスタッフの目に止まっていた。1年時にFWから右サイドバックにコンバートされると、2年生になった昨年6月にCB転向を告げられた。
「仲村浩二監督に『(OBである)チェイス・アンリのように何でもできるCBになれ。アンリは誰よりも努力家でサッカーに打ち込んでいた』と言われ、自分の中で火がつきました」
だが、そんな簡単なものではなかった。サイズに対して身体操作の面で課題があり、裏への対応や苦手なヘディングで苦戦を強いられた。それでもポテンシャルの大きさと、高校で巻き返したいという覚悟が両輪となって彼は、CBとしての経験を積み重ねながら、課題解消に向けて前向きな気持ちを持ち続けた。
昨年11月のプレミアリーグEASTの柏レイソルU-18戦でついにプレミア初出場をスタメンで飾ったが、「レベルが全然違った。いつもは足を伸ばせば届くところが、レイソルの選手たちはそれすらも交わしてきた。結局僕のところから2失点をして0-2で負けてしまいました」と口にしたように、トップレベルの高さに打ちひしがれる結果となった。
「73分で交代を告げられて、本当に自分がまだまだだと痛感させられました。そこからは自主トレでひたすら1対1をやったり、ビルドアップのパスの強弱、ロングボールの質にこだわってやったりなど、自分が課題だと感じた部分を徹底的にやるようになりました」
同級生のドリブラーであるMF臼井蒼悟と何度も対峙し、駆け引きやスピードで圧倒してくる中で必死に対応した。キックも左右両足、コントロールなど細かい部分を意識しながら取り組んだ。
心の中で「後悔はしたくない」という強い思いを持って、最高学年を迎える今年に懸けている。
2月上旬の東北新人大会は不動のCBとして最終ラインで存在感を発揮し、2連覇に大きく貢献した。しかし、3月2日に行われたトライバルステージの流通経済大柏戦はベンチスタート。チームメイトの負傷で前半途中から出場したが、彼は今厳しいチーム内競争にさらされている。
「僕は今までメンタルが弱くて、中学も高校のこれまでも競争で負けてきてしまった。ここで変わらないと、夢であるプロサッカー選手になんて到底なれないし、何より中学と同じ3年間は過ごしたくない。強くなるため、自立するためにここに来たからこそ、CBとしても人間としても頑張って成長していきたい」
ようやく見つけた居場所。競争はここに来る前から厳しいとは分かっていたからこそ、ここで屈するわけにはいかない。身長は今も少しずつ伸びているという大器は、ここから意地の巻き返しを見せてくれるはずだ。
(FOOTBALL ZONE編集部)