58歳カズ、JFL開幕戦をスタンド観戦 J3ライセンス再取得を熱望「鈴鹿を盛り上げたい」

スタンドからチームの開幕戦に声援を送った三浦知良【写真:荻島弘一】
スタンドからチームの開幕戦に声援を送った三浦知良【写真:荻島弘一】

JFLアトレチコ鈴鹿FW三浦知良がレイラック滋賀との開幕戦をスタンドから見届け

 JFLアトレチコ鈴鹿FWカズ(三浦知良)のプロ40年目シーズンが幕を開けた。調整不足でチーム練習への合流が遅れているカズは3月9日、レイラック滋賀との開幕戦をスタンド観戦。試合は2-4で逆転負けしたが、新シーズンに向けて新たな闘志も燃やしていた。

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 チームの得点を立ち上がって喜び、失点に点を仰いだ。スタンドのカズは派手なゴールの奪い合いに感情を露わにした。調整の遅れから開幕戦には間に合わなかったが、チームとは別に鈴鹿から車で会場入り。自らの目でチームのシーズン初戦を見届けた。

 前半こそ相手のミスもあって2-1とリードしたが、後半15分に同点ゴールを許すと、その後も勢いに乗る相手に圧倒された。悔しい黒星スタートに「負けたのは残念だけど、滋賀もいいチームだったから」と自らに言い聞かせるように言った。

 絶賛したのは、スタジアムの雰囲気だった。昨年から稼働している滋賀の新本拠、平和堂HATOスタジアムを埋めたのは5158人。クラブ創設以来最多観客の大声援が、チームを後押しした。「5000人ですよ。滋賀も盛り上がってる。僕らも頑張らないと」と話した。

 先月28日に58歳の誕生日を迎えたカズは、新シーズンに向けて「鈴鹿を盛り上げたい」とコメントした。クラブは一度失ったJ3ライセンスの再取得を目指し、三重県から初のJクラブになることを狙っている。「地元の盛り上がり」が大事だと思うからこそ、今季の目標に掲げ、同じくJを目指す滋賀の盛り上がりにも注目したのだ。

 そんなクラブに、起爆剤が加わった。先月、元日本代表MF越後和男氏が事業統括部入り。四日市中央工から古河電工(現ジェフユナイテッド千葉)に入社し、19歳で司令塔としてリーグ優勝に貢献して新人王を獲得。20歳の時には奥寺康彦。岡田武史、宮内聡らとアジアクラブ選手権(現ACL)に出場、日本チーム初のアジア王座も獲得した。

 Jリーグ創成期にはジェフ市原の中盤を支え、旧JFLのブランメル仙台(現ベガルタ仙台)では中心選手としてチームをJリーグに導き、引退後は指導者としてユース世代や台湾女子代表の監督としても実績を残した。カズが「子どもの頃から活躍を見ていた」という三重のレジェンドには、行政とのパイプ役や地域密着への期待も大きい。

 越後氏は「何ができるか分からないけれど、自分の経験をクラブのために生かしたい」と意欲的。もちろん、目指すのはJ3昇格。「チームの成績も大切」と話し、カズの存在にも「それは大きいですよ」。黒星スタートにも「まだまだ、これから」と話した。

 クラブにとって重要なシーズンの開幕。カズにとっても「開幕」は40回目になっても特別だ。「焦りたくはない。焦って復帰して、すぐにダメになっても仕方がない。まずはコンディションを整えること」と、気持ちを落ち着かせるように話した。

 とはいえ、開幕戦を戦っているチームメイトたちに大きく遅れるわけにはいかない。1か月前には「4月くらい」と話していたチーム練習への完全合流も「少し早くできるかも。もう部分的には合流しているので」と早期の戦列復帰に意欲をみせた。

 これまで以上に苦しいシーズンインだが「しっかりシーズン最後まで戦える身体を作って臨みたい」と長いシーズンを見据えて話した。三重県から初のJリーグ入りを目指して、カズの、そしてクラブの厳しい戦いが始まった。

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荻島弘一

おぎしま・ひろかず/1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者として五輪競技を担当。サッカーは日本リーグ時代からJリーグ発足、日本代表などを取材する。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰。20年に同新聞社を退社。

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