サッカーでプロ諦め…遠藤航とキャリア分岐「自分はできなかった」 残留決意は“必然”【インタビュー】

日本フットサルリーグの湘南ベルマーレでプレーする菊池大介【写真:河合拓】
日本フットサルリーグの湘南ベルマーレでプレーする菊池大介【写真:河合拓】

湘南ユースから浦和まで共闘した菊池大介が語る遠藤の“残留選択”

 日本代表MF遠藤航は、冬の移籍市場でイングランド1部リバプールから出場機会を求めて移籍する可能性が報じられていた。ただ最終的に残留を選択。現在、日本フットサルリーグの湘南ベルマーレに所属するFP菊池大介は、そんな遠藤と湘南ベルマーレユース、湘南ベルマーレ、さらに浦和レッズと3つのクラブでチームメイトだった。プロとして名をあげる前から遠藤を知る菊池は、今回の決断を「航らしい」と語り、自身の考える遠藤が成功できている理由を語った。(取材・文=河合 拓/全4回の1回目)

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 浦和で中心選手となった遠藤は、ベルギー1部シント=トロイデンへ移籍して欧州でのキャリアをスタートさせた。一方の菊池は加入直後こそ浦和で存在感を示したが、徐々にポジションを失っていき、2シーズンを過ごした後に柏レイソルへ移籍。その後、アビスパ福岡、栃木SCへのレンタル移籍を経てFC岐阜でプレーした後、2023年にフットサル選手に転向した。

 浦和の在籍期間は短期間だった菊池だが、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)と天皇杯という2つのタイトルを獲得している。だが、浦和での思い出を聞くと「試合に出られずに悔しい思いをしたことが、一番の思い出ですね。『苦しかったな』っていうか」と振り返った。

「クラブはACLを獲ったり、クラブワールドカップ(W杯)に行ったり、天皇杯で勝ったりしたのですが、そこに自分がいない。満員の埼スタ(埼玉スタジアム)で、決勝に6万人、7万人が入るなか、僕はスタンドで見てるっていうのがもう一番の印象。それを見返したいなというか、そこに自分が立ちたいなっていう思いで、次のチャレンジを決めたっていうのもありますし、その気持ちが一番ですね」

 そうなった理由は何だったのか。「自分の責任」と菊池は言う。「最初は自分もチャンスをもらえていました。ミシャ(ミハイロ・ペトロヴィッチ)が監督で、それこそキャンプでも『めちゃくちゃ良かった』と言ってもらって、ゼロックス(・スーパーカップ)でスタメンとして使ってもらったり、リーグ戦でも割とチャンスをもらえていたりしたんです。そこで自分が(爪痕を)残せなかったのが、すべてだったと思う」と振り返る。

 続けて「それでチャンスをつかめていたら、また違う未来が待っていたと思うので。自分にはそういう大事な舞台、『ここぞ』っていう時に結果を残すとか、『ここでやんなきゃいけないよ』っていう時に、やれる能力が備わっていなかった」と、対照的な存在として遠藤航を挙げた。

「そういうところで活躍できるのが航だった。そういう選手がやっぱり今ああいう舞台に立ってると思う。本当に少ないというか、どこで得られるかわからないチャンスを掴めるかどうかは、すごく選手にとって大きい。やっぱりサッカーはメンタルのスポーツというか、メンタリティが一番大事な要素だなと思いますね」

菊池大介が遠藤航のパーソナリティに言及【写真:ロイター】
菊池大介が遠藤航のパーソナリティに言及【写真:ロイター】

遠藤は「淡々とできる」…異なるメンタリティ

 では、遠藤はどのようなメンタリティを持っていたのか。

「どんな状況でも『俺もピッチで見せればいいでしょ』っていう感じで、それを淡々とできる選手だったんです。それは隣で見ていても『すごいな』と思っていましたし、じゃあ同じことを自分ができるかといえば、それはできなかった。サッカー選手を長く続けられなかった要因の1つは、そこかなっていう気もしています」

 菊池のサッカー選手としてのキャリアは湘南のトップチームに昇格した16歳から始まっている。そこからフットサルに転向するまで15年。決して短くはなかったサッカーキャリアだが、「期間として『長い』『短い』と言うと、長いのかもしれないですけれど、まだまだトップレベルでやりたい気持ちはもちろんありましたからね」と、自身の考えを語った。

 そしてJ2、J3も経験したからこそ、「やっぱりJ1でプレーするっていう価値は高い。J2、J3にもプロとして頑張っている選手、すごい選手もたくさんいます。でもやっぱり海外はもちろんですが、国内ではJ1で試合に出続ける選手が本当に一番価値の高い選手だと思う。J1はそれだけの舞台。選ばれし選手がいて、そこで出続けられるのは、能力、メンタリティが備わっていないと難しい」と、J1や海外で戦う選手のすごさを感じ取っていた。

 浦和で出場機会を得られなかった菊池は、移籍という道を選択した。リバプールで出場機会を得られなかった遠藤は、残留を決断した。この遠藤の決断について「それがすごいですよね」と菊池は言い、自身との考え方の違いがあったと話す。

「僕はああやって試合に出られないと、すぐ『じゃあ次はどこに行こう』とか考えていました。当時はプライドがあったというか、『これだけ調子が良いのに、なんで出してくれないの?』とか『なんで俺はこんなに出られないんだろう』って、外でワーワー言っていましたが、それは自分にとって何も意味がなかった。自分に責任があると分かっていながらも、試合に出られていないことを人のせいにしてしまうというか、出られないことをすべて自分の責任ではなく、外に責任転嫁していました。それが一番の成功できない要因だったと思いますね。

 航には、そういう考えは全くないと思いますよ。『ピッチで自分が示せば、上にあがれる』と言い続けていましたし、そのように取り組んでいましたから。やっぱり簡単じゃないですか。試合に出られないから移籍先を探して、また違うところでチャレンジをするっていうのは。出られないからこそ、そこに留まって、そこで出られるように努力することは、なかなか簡単なことじゃない」

残留で定位置を掴む「どれだけ価値の高いことか」

 新天地を求める移籍は、新しい環境を求めることになるから一見すると難しいように見える。だが、スタートラインに立てていない状況をリセットして、新たに自分を求めてくれる場所に行くことでチャンスを得ることは、難しくないというのが菊池の考えだ。だからこそ、クラブに留まってポジションを掴むことに大きな価値があると続ける。

「若い選手は、『ここで出られないから違うところで』って移籍を選ぶ人が多いと思います。もちろん、それで試合に出られるようになれば正解なのかもしれません。でも、選手として、人として、そこに留まって、そこで成功をつかみ取ることが、どれだけ価値の高いことか。

 それを航みたいな選手が証明していると思うし、だから、(冬の移籍市場でも)『あいつはリバプールに残ってやるんだろうな』と思って見ていました。それで実際にちょっと使われたら結果を残せる。しかも本来の守備的MFではなくて、違うポジション(センターバック)でも、ですからね。本当にすごいなと思います」

 浦和から対照的なキャリアを歩むことになった遠藤と菊池だが、菊池は今季限りでのフットサル選手としての引退を発表しており、アスリートとしての活動を終えることになる。今後は遠藤とともに下部組織時代を過ごした湘南のクラブスタッフとして働くことになる菊池は、リバプールの3番がさらに充実のキャリアを過ごしていけると、強く信じている。

(河合 拓 / Taku Kawai)



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