久保建英の「退団を不安視することに」 マンU戦で協力的姿勢も…主力流出を番記者が不安視【現地発コラム】

ユナイテッド戦に出場した久保建英【写真:Getty Images】
ユナイテッド戦に出場した久保建英【写真:Getty Images】

ELのマンU戦先発の久保、スペイン各紙は辛口評価「できる限り試みたが…」

「強い弱い関係なく、個人的にはユナイテッドとやったほうが勝率は高くなると思う。トッテナムはボールを持てるチームだから、持たれるとうちはきつい。僕らがボールを持てるチームのほうが望ましいという意味で、ユナイテッドのほうがチャンスはあると思うし、2年前に向こうで勝っている」

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 久保は1月下旬、UEFAヨーロッパリーグ(EL)リーグフェーズ最終節の勝利直後に、先を見越してこう分析した。

 プレーオフでミッティランを下したレアル・ソシエダは、久保の希望どおりにラウンド16でマンチェスター・ユナイテッドとの対戦が決定。久保は週末のFCバルセロナ戦を出場停止で欠場したことで、リフレッシュした状態で第1戦に臨むことができた。

 試合当日、チームの大一番にもかかわらずスタジアムは満員とはならなかった。通常より早い18時45分キックオフの平日開催、チケットの最低価格がラ・リーガの通常の試合の3倍近い70ユーロ(約1万1200円)と、これらが影響したのだろう。

 スタジアム周辺は、マンチェスターから乗り込んで来たアウェーサポーター2000人に備え、警察官が多数配置される厳戒態勢だ。試合前から緊張感が漂い始めていた。

 先発した久保はいつも通り4-3-3の右ウイングでプレーするも、相手が守備時に5バックとなり、厳しくマークを受けた。上手くスペースを得られなかったため、クロスやセットプレーで果敢にチャンスメイクを狙っていく。後半13分に先制点を奪われてしまったが、久保のCKがPK獲得につながり、25分にキッカーのミケル・オヤルサバルがゴールを決め試合を振り出しに戻した。久保は後半36分までプレーし、試合はそのまま1-1で終了。準々決勝進出の行方は、敵地オールド・トラフォードでの第2戦に委ねられることになった。

 存在感をあまり発揮できなかった久保に対するスペイン各紙の評価は軒並み低いものとなった。クラブの地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」は、「ラ・レアルがチャンスを作り出せるとしたら、彼の離れ業によってだと思われたが、違いを生み出せなかった。ルベン・アモリム監督は久保サイドに、マタイス・デ・リフトよりもはるかに足が速いノゼア・マズラウィを配置した。右足の完璧なクロスは味方に合わなかった」と評し、2点(最高5点)と採点した。

 もう1つの地元紙「ノティシアス・デ・ギプスコア」は、「できる限りのことを試みたが、マンチェスター・ユナイテッドのシステムは彼にあまり恩恵を与えなかった。チャンスをほとんど作れなかったが、決して諦めない彼の粘り強さは注目に値する」と寸評し5点(最高10点)。全国紙「マルカ」と「AS」の評価はともに1点(最高3点)と低いものであった。

スペインのラジオ局「カデナ・コペ」でレアル・ソシエダの番記者を30年以上務めるマウリシオ・イディアケス氏【写真:高橋智行】
スペインのラジオ局「カデナ・コペ」でレアル・ソシエダの番記者を30年以上務めるマウリシオ・イディアケス氏【写真:高橋智行】

番記者は「酷い試合の1つ」と指摘も…久保の姿勢を高く評価

 レアレ・アレーナで中継を担当した、スペインのラジオ局「カデナ・コペ」でレアル・ソシエダの番記者を30年以上務めるマウリシオ・イディアケス氏は試合直後、首を横に振りながら話し始めた。

「今日は久保の酷い試合の中の1つに入った。バルサ戦を休んだが、今日の彼からは輝きを感じられなかった。マンチェスター・ユナイテッドのディフェンスはあまり速そうには見えなかったので、久保ならより違いを見せられると期待したが、上手くいかなかった」

 この試合でのセットプレーの精度にも触れ、「PKを獲得したCKは良かったが、全体的には良くなかった。特に前半は中途半端な高さにCKを蹴っていた」と指摘したが、チームメイトのゴールをお膳立てしようとする姿勢を高く評価した。

「今日はとても協力的だったよ。いつもはもっと個人主義に走る傾向にあるが、今日はシュートよりもクロスを狙い、チームのために戦っているのが感じ取れた。カットインしてシュートを狙う彼の典型的な動きではなく、右足でクロスを上げていたのも印象的だった。しかし、ラ・レアルの前線には空中戦に強い選手があまりいないから、効果的でなかったのが残念だ」

 最後に次節のラ・リーガについて、「ホームで行われるセビージャ戦は、私にとっては今日の試合よりも重要だ。もし来季、ラ・レアルがヨーロッパの大会に出られないなんて事態が起これば、今夏の移籍市場で主力選手にオファーが舞い込むだろうし、久保の退団を不安視することになるからだ。つまり今度のセビージャ戦は絶対に勝ち点を落とすわけにはいかない」と話し、欧州カップ戦出場権争いのライバルとの一戦を重要視していた。

 ソシエダは2025年に入ってから、中2〜3日ごとに1試合というペースの過密日程を消化しており、そのハードな状況は今月半ばの代表ウィークまで続く。しかし、久保は代表メンバー入りしたら日本までの長距離移動を余儀なくされるため、その後も休むことなく稼働することになる。いかにコンディションを崩さずに、シーズン最後の重要な時期に臨むことができるのか。戦いはピッチ外でも休むことなく続く。

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高橋智行

たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。

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