リバプールに欠かせない…クローザー遠藤航の価値 短いプレー時間でも“目的特化”で全幅の信頼【コラム】

遠藤航はPSG戦の後半途中から出場した【写真:Getty Images】
遠藤航はPSG戦の後半途中から出場した【写真:Getty Images】

プレー時間が短くても…リバプールにとって遠藤が重要な選手である証

 UEFAチャンピオンズリーグ(CL)ラウンド16でパリ・サンジェルマン(PSG)と対戦したリバプールは、アウェー第1戦をハーベイ・エリオットの決勝点で1-0と勝利した。
 
 試合内容は一方的にホームのPSGが攻め込む流れ。GKアリソン・ベッカーの超人的なセーブがなければ3、4点入っていたかもしれない。前半、ミドルゾーンにブロックを構えていたリバプールだったが、後半からは前からプレスする姿勢も見せた。しかし、全く効果はなくボールを奪えないのは変わらず。得意のカウンターアタックもPSGの素早い対応に封じられ、エースのサラーは対面のヌーノ・メンデスに抑えられ何もできないまま後半41分に交代した。

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 しかし、サラーと交代したエリオットがワンチャンスを活かしてゴール。GKアリソンのロングボールをダルウィン・ヌニェスが競り、自らこぼれ球を拾ってフリーで走り込んできたエリオットへつないでいる。

 遠藤航の登場は後半33分だった。ライアン・フラーフェンベルフとの交代。アディショナルタイム含めてプレーした時間は17分間だ。今季、遠藤のプレー時間は極めて短い。プレミアリーグでは13試合に交代出場しているが平均プレータイムは約9.6分。最長がアウェーのウェストハム戦の33分間だった。CLでも出場したのはリーグフェーズ8試合中4試合。第1節のACミラン戦は後半アディショナルタイムでの登場。第6節ジローナ戦も後半44分から。第8節PSV戦は珍しくフル出場の時間が与えられたが、ほとんどは数分間しかプレーしていない。
 
 それでも遠藤はどの試合でもベンチ入りしている。またPSG戦の前日会見で監督とともにインタビューに応える選手に選ばれていた。リバプールにとって遠藤が重要な選手である証だろう。
 
 重要なのにプレー時間が極めて短い。この奇妙に思える現象は5人交代制ならではかもしれない。

 たいがい最初の交代は後半15分~25分に行われる。複数交代することも多く、PSG戦では後半22分にルイス・ディアス→カーティス・ジョーンズ、ディオゴ・ジョッタ→ヌニェスの交代を行っている。アタッカー2人の交代は攻撃のテコ入れを狙ったものだ。この時間帯にスタミナが切れてくるので、フレッシュな選手を登場させるのは多くのチームで常套手段となっている。PSGも後半21分にFWブラッドリー・バルコラをデジレ・ドゥエに代えていた。

クローザーとしての役割を全う【写真:ロイター】
クローザーとしての役割を全う【写真:ロイター】

クローザーとして重宝される遠藤航…相手にとって通過が非常に難しい壁

 その約10分後にも両チームとも交代がある。残りは約10分、このタイミングでの交代は試合の流れを見ての戦術的な意味合いが強い。PSGはクビチャ・クワラツヘリアをゴンサロ・ラモスに代え、ファビアン・ルイスをウォーレン・ザイール=エメリに代えた。クワラツヘリアをG・ラモスに代えたのは疲労もあるが、ウイングからセンターフォワードへの交代であり、ゴール前の圧力を強めたかったからだろう。F・ルイス→ザイール=エメリはMFなので運動量の確保。ホームのPSGはなんとしても得点したかった。
 
 一方、リバプールはフラーフェンベルフ→遠藤。これも疲労を考慮したものだが、守備の強い遠藤に代えることで劣勢の試合を持ちこたえようという意図だろう。次戦はホームなのでドローでいいという判断だ。
 
 相手にとって遠藤を通過するのは非常に難しい。壁のように立ちふさがり行く手を阻む。遠藤は登場してすぐに連続でボールを奪っていた。終盤の交代には負傷を避ける意味もある。互いに疲労していてファウルが多くなるからだが、遠藤の役割はクローザーだ。その守備力でそのまま試合を終わらせる。出場時間が短いのでコンディション維持が難しいが、全幅の信頼を置かれている。5人交代制になり、スターター、ゲームチェンジャー、クローザーと、それぞれの目的に特化した起用をするようになっているのだ。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)



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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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