“異色の先輩”に憧れ…CBからFWまで「質が高い」 187cm万能戦士のように「僕もなりたい」

大津・村上慶【写真:FOOTBALL ZONE編集部】
大津・村上慶【写真:FOOTBALL ZONE編集部】

大津高2年生DF村上慶が目指す頭の中で「あるべき自分」

 サイドバックもCB(センターバック)もできる守備のユーティリティーは全国を見ても多くいるが、大津高校(熊本)の2年生DF村上慶ほど器用でどこも高いクオリティーで出来る選手はそうはいない。

 理由はいくつもある。182センチという高さに加え、中学までフットサルも経験していたように足もとの技術も高く、スピードもある。右利きだが、アビスパ福岡アカデミーで育った小学校時代に両足のキック力測定をした際に、左足のキックの数値が圧倒的に低かった現実を受けて「僕の負けず嫌いの心に火がつきました(笑)」。そこから左足のキックを猛練習。高校に入ると左右の足で遜色のないパワーと質のキックを出せるようになった。

 このマルチな能力を生かし、中学時代は右サイドバック、高校では2年まで3バックの両CB、4バックのCBと左サイドバックをこなし、今年は守備の象徴である背番号5を託されて右サイドバックが主戦場となった。

 1年次からトップチームの試合に出場する彼とは、一昨年からコミュニケーションを重ねているが、会う度に表情が引き締まっていき、発言の内容が濃くなっている印象を受ける。その理由は彼の貪欲かつ謙虚な学ぶ姿勢に起因をしていた。

「碇明日麻(水戸ホーリーホック)さんは僕の中で基準になっています。あれだけサイズがあるのに、CBだけではなくボランチ、サイドバック、トップ下からFWまで本当にどこでも質が高いプレーをします。僕もさすがに守備から攻撃まですべてはいきませんが、複数のポジションをどれも高いレベルでこなせる選手になりたいです」

 1年の時、3年生だった碇の圧倒的な存在感に大きな刺激を受けた。187センチの長身を誇りながらも、器用にタスクをこなす。自分自身もサイドバックだろうがCBだろうが、「どれも自分の得意とするポジションだと常に考えるようにしてきた」と、「やらされている」という感覚は一切持たずに、どれも天職だとポジティブに捉えて日々を過ごしてきた。

 昨年は不動のレギュラーを掴みながらも、「まだまだ(五嶋)夏生(筑波大進学)さんには精神面で追いついていない」と口にしたように、常に周りを見ながら危険を察知したら自分で動くだけではなく、声で周りに伝えて全体をコントロールしていく五嶋のプレーを見て、「自分は『ここぞ』というところで声を出すことを躊躇ってしまうことが多いので、伝え切る力を身に付けたい」と刺激を受けていた。

 碇、五嶋という偉大な先輩の姿をしっかりと見て、今の自分と照らし合わせながら、頭の中で「あるべき自分」をより具体的にイメージをしていく。それを怠らずにやり続けてきたからこそ、彼の立ち振る舞いは徐々に大人になり、発言も自問自答の末に紡いだ言葉を口に出すからこそ、濃いものになっていたのだった。

 最終学年となる今年は自立したプレーと、自律をした立ち振る舞いを見せ、周りのお手本としてチームにプラスの力にならないといけない。村上の覚悟は固かった。

「先輩たちから吸収するべきものは最後まで貪欲に吸収するつもりでやりました。でも、選手権の流通経済大柏戦(1-2)の2失点目は僕の対応が後手に回ったことで決められてしまうなど、やっぱり僕に足りないものがあったからこそ、選手権で日本一になれなかった。今年はもう1年しかないので、明日麻さんのようなどこをやっても結果を出せる選手、夏生さんのようにリーダーシップやチームをまとめる力を発揮できるようにしたい」

 イメージはさらに膨らんでいく。高校最後のシーズンは、これまで同様にそれを1つ1つ表現できるように努力を重ねる日々となる。この日常がある限り、村上の可能性はこれからさらに大きな広がりを見せていくだろう。

(FOOTBALL ZONE編集部)



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