まるで“三笘ドリブル”…スター候補生が出現 強豪2軍から台頭→株上げる高2タレント

尚志・臼井蒼悟【写真:FOOTBALL ZONE編集部】
尚志・臼井蒼悟【写真:FOOTBALL ZONE編集部】

尚志のドリブラー・臼井蒼悟が放つ特大なポテンシャル

 ボールを受けたらアウトサイドを巧みに使いながら相手の状況を見て、一気に加速をして仕掛けていく。三笘薫(ブライトン)のようなドリブルを持つ尚志高校(福島)のMF臼井蒼悟は、最終学年となってトップチームでようやくレギュラーの座を掴んだ注目の存在だ。

 昨年の主戦場はセカンドチームとしてのプリンスリーグ東北。そこで得意のドリブルは猛威を振るい、得点ランキング2位となる11ゴールを叩き出した。しかし、トップチームではなかなか絡めず、プレミアリーグEASTでは出場ゼロ。選手権でも出番はなかった。

「トップで出られなかった理由はよく理解していました。ドリブルが武器でも、体力があるほうではないし、守備は僕の短所。尚志に入学をしてからは、守備をサボっていたわけではないのですが、やりきれていなかった」

 仲村浩二監督などにも指摘をされていたが、なかなか気づくことができなかった。はっきりしている長所を持っている選手は、どうしてもその長所を伸ばすことに意識するあまり、短所に関しては「意識しているつもり」の状態になってしまうことが往々にしてある。

「正直、自己中心的でした。昨年のプレミアが終わった時に、『いよいよこのままではやばい』と思うようになったんです。これまでの気持ちの持ち方では3年生になってもトップの壁は破れないと思いました」

 強烈な危機感が彼の心を支配した。いずれできるようになるでは高校サッカーはあっという間に終わってしまう。

「変わるなら今しかないと思いました」

 プレスバックや前からのチェイシングなどを、一切手を抜くことなくやり続ける。そのうえで守備から攻撃に切り替わった時にドリブルで一気にチャンスを作っていく。練習からの意識を変えて取り組み始めた。

 2月の東北新人大会では彼のドリブルは猛威を振るった。サイドに張るだけではなく、中央に潜り込んでボールを受けてからスルーパスやサイドに展開したり、ワンタッチでボールを叩いてから裏に抜け出したりと広いプレーエリアを駆使した仕掛けでチャンスを作り出した。

 守っては果敢なチェイシングからショートカウンターを引き出すなど、確実に練習の成果はプレーに現れていた。臼井のインパクト絶大のプレーに引っ張られるように、チームは準々決勝では青森山田に4-1で快勝するなど、圧倒的な力を見せつけて2連覇を達成した。

「今年はプレミアから降格をしてプリンス東北を戦う形になってしまったのですが、自分の力でもう一度プレミアに上げることを意識したいと決意しました。プリンスでは負けてはいけないと思うし、インターハイ、選手権でプレミア勢を倒すためにも、これまでの甘さを捨てて全力で取り組みたいと思います」

 こう決意を述べてから1か月後。臼井はトライバルステージ2025の流通経済大柏戦で再びキレのあるドリブルを見せた。チームは1-2の敗戦を喫したが、この試合で彼は左サイドハーフ、右サイドハーフ、トップ下の3つのポジションでドリブルとパス、前線からのプレスで存在感を放った。

「やっぱりこの年代のトップレベルのチームは守備強度がこれまでの相手と全然違った。1人目を交わすことができても、2人目で止められたり、スペースを消されたりと守備が分厚かった。この強度の前にもっと力を発揮しないといけないし、自分の守備ももっと改善していかないといけないと痛感させられました」

 反省の弁しか出なかったが、臼井の話からはドリブルや自分の長所だけの尺度ではなく、短所やチームとしての視点から思考していることが十分に伝わった。「気づくのがもっと早かったら」と口にしていたが、この思考を持てるようになったことこそが今後、臼井の成長の起爆剤となっていくことは間違いない。

「もっとプレーの波をなくしたいし、苦しい時に貢献できる選手になりたい」

 本気でなりたい自分を求め続ければ、いつしかそれが叶い、さらなる上のステージを自然と目指している自分になる。彼にはその姿を期待している。

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